加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

論証を記憶する5つのコツ

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一元化教材を何度回しても論証の記憶が定着しない方は、記憶対象が自分に合っているか、記憶方法が自分に合っているか、記憶に必要とされる理解力・記憶力の不足分を補う工夫をしているか、記憶の反復が足りているかについて確認してみましょう。

これらを意識することで、だいぶ記憶のしやすさが変わると思います。

 

1.既存の論証を自分に合った長さ・水準・表現に修正する

1つ目は、論証の長さを記憶できるところ(さらには、答案に書けるところ)まで短くするということです。これが記憶にもたらす積極的効果は以下の3つです。

  • 論証を短くすることにより、記憶対象が減るため、その分だけ、記憶の負担が軽減される。
  • 論証を短くする過程で、この論証の重要部分は何か、規範はどういった意味か(規範を短くする際には、意味が大きく変わらないよう注意する必要があるため、規範の意味について考えることになる)といったことについて何度も何度も真剣に考えるため、論証の理解が深まる。論証の理解が深まることにより、記憶が促進される。
  • 論証を短くする過程で、論証の重要部分や規範の意味を何度も何度も真剣に考えるため、同じ論証を何度も繰り返し読むことになる。短時間に何度も論証を読むことにより、自然と記憶できる。

2つ目は、1つ目とも関連することですが、論証は出来るだけ単純なものにするということです。

単純化する過程で論証の正確性が低下しますが、構いません。理由付けについては核になることだけ論証に反映すれば足りますし、規範も意味が大きく変わらない範囲で単純化して構いません。

例えば、「横領」の規範については、「横領」=①不法領得の意思の外部的発現(上位規範)=②権限逸脱行為(下位基準)と単純化し、「横領」の規範としては①だけ書き、当てはめで②を意識すれば足ります。

これによる効果は、1つ目と同じです。

3つ目は、自分に合った日本語表現に修正することです。論証の書き出し、接続詞、読点の打ち方、文末表現(解する、解すべきである、考える等)を自分に合ったものにすると、記憶しやすいです。

論証をいちから作成することは結構な手間ですが、既存の論証を自分に合った長さ・水準・表現に修正することは、記憶を促進する手段として非常に効果的ですし、文章力の向上にも繋がります。

このように、既存の論証を自分に合った長さ・水準・表現に修正することは、”作業”と揶揄されるものではなく、理解力・記憶力の不足を補ったり、文章力を底上げするための”勉強”として非常に重要な意味を持ちます。

時間を要する勉強ではありますが、自分に合わない一元化教材を何度も何度も回しても試験当日までにインプットが完成しませんから、試験直前期及び試験前日に記憶し切れる自分に合った一元化教材を作るためにも、上記の勉強は重要です。

なお、論証の短文化・単純化により、論証の正確性が低下することがありますが、論証(特に規範)を答案に書けけない・明らかに間違った論証(特に規範)を答案に書くことに比べればましです。無理をして出来ないくらいなら、そこそこの水準で対応できる範囲を増やしましょう。

現行司法試験・予備試験では、「加点方式かつ当てはめ重視」が原則ですから、論証がやや不正確でもちゃんと加点されます。

 

2.キーワードを正確に記憶し、キーワードどうしは理解で繋げる

論証のうち、理由付けの核となる部分と、上位規範については、必ず記憶する必要があります。この2つを記憶しないと、「理由+規範」という形式の論証にならないからです。

理由付けの核となる部分と、上位規範は、論証のキーワードと呼ばれるものです。

これらについては、ある程度正確に記憶する必要があります。

もっとも、キーワードという「点」どうしを結ぶ「線」については、最悪、記憶しなくも良いですし、少なくも正確に記憶しようとするものではありません。

論証の理由付けは、どんなに丁寧に書こうとしても、論理が飛躍しますし、理由と規範の論理的な繋がりの精度は採点上重視されていませんから、極論すると、「キーワード(理由の核心部分)+キーワード(規範)」という論証でも構いません。

仮に、キーワード(理由の核心部分)とキーワード(規範)の繋ぎまで書くとしても、記憶により繋げるのではなく、理解により繋げるということを心掛けるべきです。

キーワード(理由の核心部分)とキーワード(規範)という「点」までは記憶したことをそのまま書き、両者を繋ぐ「線」は理解で補う、というイメージです。

 

3.1回ごとの丁寧さよりも全体を回す回数を優先する

論証等の記憶方法は、以下の3つに大別されます。

①アウトプット経由
②インプット過程で書く
③インプット過程で何度か読む又は暗唱する

私は、学習1年目に②を試したところ、短時間で反復することができないため、すぐに③に切り替えました。

数分で1回書くよりも、数分で何度か読んだり暗唱したほうが記憶が定着しました。

①~③のいずれを選択するとしても、論証一つのひとつの正確性に囚われすぎず、1回ごとの丁寧さよりも全体的に回す回数を重視したほうが良いです。論証に関する記憶対象のうち、特に法体系上の位置づけと顕在化場面については、全体を何度も見渡す過程で自然に身に付くものだと思います。

それから、一つの論証を同一機会に何十回も暗唱するのではなく、全体像を見渡す過程で何度を暗唱するということを繰り返したほうが、遥かに記憶が定着しやすいです。

 

4.記憶・忘却・記憶の繰り返しにより記憶定着範囲を徐々に広げる

一元化教材について、前記3・②又は③の方法により、1周したとします。

2周目に入る頃には、1/3くらいしか記憶が持続していないと思います。しかし、逆に言うと、1/3は記憶が定着しているということです。

2周目を終え、3周目に入る際には、記憶が定着している範囲が1/3から1/2まで広がっています。

3周目を終え、4周目に入る際には、記憶が定着している範囲が1/2から2/3まで広がっているでしょう。

このように、記憶・忘却・記憶を何度も繰り返すことで、記憶が定着している範囲を徐々に広げていきます。

これが、論文対策で最もきつい勉強だと思います。

何度も何度も同じことを繰り返す上、前に記憶したことを忘れていると精神的な不安・ストレスにも繋がります。

この物凄く淡白で辛い勉強を何度も何度も繰り返すことができるかが、論文対策の肝です。

やれなければ記憶が定着しませんが、上記1により自分に合った論証を作った上で何度も何度も繰り返せば必ず記憶が定着します。

 

5.演習経由でインプットする際の留意点

インプットの方法には、演習経由でインプットをする方法と、一元化教材の読み込みによりインプットをする方法があります。

演習経由でインプットをするタイプの方は、網羅性のある問題集(過去問集を含む)を使った演習をする過程でインプットをすることになります。

その際、事案と論点の対応関係の記憶だけで終わらないように注意する必要があります。演習経由でインプットをするタイプの方には、この傾向が見受けられます。

論証のうち、少なくとも規範については、試験的に許容される範囲で(意味が大きく変わらない範囲で)正確に記憶する必要があります。 不安な方は、手書き答案と参考答案(又は一元化教材)の規範を比較してみましょう。

なお、演習経由でインプットをするタイプの方は、インプットの範囲が演習範囲に限定されることになります。そのため、演習経由でのインプットを中心的にやる一方で、一元化教材等を使って演習範囲外についても最低限のインプットをしておくのが無難であると考えます。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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