加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

論文試験における設問の入れ替えに伴うリスク

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例えば、設問が3つあり、設問2・3については何を書けばいいかのか分かるが、設問1については何を書けばいいのかが分からないという場合に、設問2・3で確実に得点するために、設問2⇒3⇒1という順序で答案を書こうと思うこともあると思います。

実際に、設問の入れ替えをしても合格している方、さらには、設問の入れ替えをしたことにより書けそうな設問でしっかりと得点することができたため点数が伸びたという合格者の方もいると思います。

確かに、設問を入れ替えたこと自体による採点上の不利益はないと思われます

しかし、私は、以下の2つの理由から、設問の入れ替えはできるだけ避けるべきであると考えています。

 

1つ目:問題と本気で向き合う姿勢と対応力が伸びないどころか、衰退する


一つ目の理由は、姿勢と対応力に関するものです。

普段の答練練習で分からない問題を後回しにするということを頻繁にやっていると、分からない問題と本気で向き合う姿勢がどんどん欠如していくため、分からない問題で知識を総動員して答えを捻りだそうとする練習をやらなくなります。

そうすると、分からない問題に対応する対応力がいつまで経っても伸びないどころか、どんどん衰退していきます。

これは、私自身の経験によるものです。

2回目の受験では、予備校答練や本試験(行政法、民事訴訟法)で設問の入れ替えをやっていました。

その結果、平成23年司法試験よりも簡単であるはずの平成24年司法試験の論文試験で、何が問われているのかが分からず全然書けないという設問が複数出てきました。

自分でも、ここまで設問に対応することができない経験が初めてであったため、かなり戸惑いました。

3回目の受験では、予備校答練や過去問演習の際に設問の入れ替えを一切に行わず、限られた時間の中でなんとか答えを捻り出すということを訓練しました。

本試験でも、設問の入れ替えは一切に行わず、また、解答筋にかすりすらしない設問は一つもありませんでした。

本試験において設問の入れ替えたほうが得点効率が良いという場合もあるかと思いますが、普段の答案練習で安易に設問の入れ替えをやっていると、知識を総動員して答えを捻り出すという対応力が身につきませんから、少なくとも普段の答案練習では設問の入れ替えをやらず、設問ごとの時間配分に従ってなんとか答えを捻り出すという訓練をするべきであると考えます。

 

2つ目:設問間における論理的整合性を保てないおそれ


2つ目の理由は、設問間における論理的整合性を保つことにあります。

問題によっては、前の設問における認定を前提として後の設問を論じることになる場合があります。

その傾向が最も顕著なのが会社法です。

会社法では、設問間の論理的整合性が問題とならないのはかなり稀です。

例えば、平成26年司法試験の会社法の問題では、Eが取締役・代表取締役でないという設問1における認定を前提として設問2及び3を論じることになりますから、仮に設問1を後回しにした場合、答案全体がめちゃくちゃになり、致命的な失点(又は減点)をすることになります。

直近の平成29年司法試験の会社法でも、設問2で「Lが株式取得を会社に対抗することができる」と認定したかどうかという点が、設問3におけるLの「反対株主」該当性の論じ方に影響します。

このように、科目によっては設問の入れ替えをすることができないものもあります。

 

特に、書くべきことが思いつかずペンが止まってしまうことが多いという方には、今出来ないことを本試験で出来るようになるために答案練習をしているということを明確に意識した上で、分からない問題から逃げることなく決められた時間で知識を総動員して答えを捻り出すという訓練をして頂きたいと思います。

そして、問題と本気で向き合う姿勢と対応力を鍛える上で最適な手段が、司法試験過去問の演習・復習です。

難しい問題・現場思考問題では、出題趣旨・採点実感で示された正解筋に乗ることができているか(「何を書いたか」)ではなく、「どう考えて、どう書いたか」という思考法と書き方を確認し、修正を試みましょう(関連記事として、「解答筋に乗るための勉強だけでは不十分です」という記事がございます)。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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