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令和2年司法試験論文と司法試験過去問との関連性「商法」 6位/45%
今回の記事では、令和2年司法試験「商法」論文と司法試験過去問との関連性について説明いたします。
司法試験過去問との関連性は45%です。
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設問1
- Bは、甲社の「株主」として本件株式発行の無効の訴え(会社法828条1項2号)を提起し、非公開会社では適法な株主総会特別決議を経ない株式発行は無効であるという考えを前提として、本件株式発行に係る本件決議2(会社法199条2項、309条2項2号)の取消事由を主張することになります。「非公開会社では適法な株主総会特別決議を経ない株式発行は無効であるか」という論点が問題になっているという点で、非公開会社における株主総会特別決議を経ない株式発行(株主割当て以外の方法によるものに限る)の効力に関する議論を前提とした論点である「非公開会社における行使条件に違反した新株予約権行使による株式発行の効力」(最三小判平成24・4・24・百29)が出題された平成27年司法試験設問3と共通します。
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- 前記の通り、Bは、非公開会社では適法な株主総会特別決議を経ない株式発行は無効であるという考えを前提として、本件株式発行に係る本件決議2の取消事由を主張することになります。そのため、本件優先株式に係る定款変更決議である本件決議1(会社法108条2項1号、466条、309条2項11号)の取消事由の存在は、本件株式発行に係る決議決議2の取消事由を基礎づけるものとして主張することになります。したがって、「本件決議1に取消事由があることが本件決議1を前提とする本件決議2の取消事由を基礎づけるか」という現場思考論点が顕在化します。これは、平成25年司法試験設問2で出題された「取締役報酬総額を定める株主総会決議(361条1項柱書)に取消事由があることがこれを前提とする取締役個別報酬額を定める取締役会決議の無効を基礎づけるか」という現場思考論点と共通します。
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- Bは、本件決議1の取消事由及び本件決議2自体の取消事由の一つとして、甲社が取締役会設置会社であるにもかかわらず株主総会の招集通知に記載されていない議題である「定款変更の件」及び「新株発行の件」について決議したことが会社法309条5項に違反すると主張することになります。309条5項違反を理由とする株式総会決議の取消事由は平成25年司法試験設問2でも出題されています。なお、株主総会の招集通知に議題が記載されていなかったことは、それ自体として、298条1項2号違反による取消事由にも該当します。
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- 本件株式発行は有利発行に該当するため、取締役は株主総会において会社法199条3項に基づく説明義務を負います。Bは、本件定時総会において代表取締役社長Cが「当該払込金額で…募集をすることを必要とする理由」について虚偽の説明をしたことが会社法199条3項の説明義務に違反するということを、本件決議2の取消事由として主張することになります。説明義務に関する一般規定(314条)ではなく、個別規定による説明義務(199条3項、180条4項等)違反が問題になるという事案は、株式併合における説明義務違反(180条4項)が問われた平成29年司法試験設問2でも出題されていますこの意味で、平成29年司法試験設問2とも共通します。
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- なお、本問では、199条3項の説明義務違反の前提として、本件株式発行の有利発行該当性が問題になりますが、これについて参考になる司法試験過去問はありません。本問では非上場会社における有利発行該当性が問題となっており、これについては上場会社とは異なる枠組みにより判断されるため(最一小判平成27・2・19・百23)、上場会社における自己株式の有利処分該当性が問題になった平成23年司法試験設問②は参考になりませんし、上場会社が企業提携の際に提携先企業に新株を発行した場合における有利発行該当性が問題になった平成19年司法試験設問1(有力説は、特殊な枠組みにより判断します)も参考にならないと思います。
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設問2(2)
- 設問2(2)では、本件株式併合の効力発生前の時点において株式併合の対象株式を保有するPが取り得る会社法上の手段について検討することが求められています。具体的には、①株主総会決議取消しの訴え(会社法831条1項)+決議執行停止の仮処分の申立て(民事保全法23条)、②株式併合差止訴訟(会社法182条の3)+差止仮処分の申立て(民事保全法23条)、及び③反対株主の株式買取請求(会社法182条の4、同法116条1項3号)を挙げることになると思います。これは、吸収合併の効力発生前に消滅会社の株主が取り得る会社法上の手段が出題された平成21年司法試験設問6と共通します。吸収合併の効力発生前に株主が取り得る会社法上の手段としては、④株主総会決議取消しの訴え(会社法831条1項)又は株主総会決議無効確認の訴え(会社法830条2項)+決議執行停止の仮処分の申立て(民事保全法23条)、⑤合併差止訴訟(会社法784条の2)+差止仮処分の申立て(民事保全法23条)、及び⑥反対株主の株式買取請求(会社法785条)を挙げられます。①は④、②は⑤、③は⑥に対応します。なお、平成21年司法試験設問6では会社法上の手段のうち「合併の実現を阻止するため」の手段が問われているため、⑥は検討対象外でした。
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- ①では、取消事由として、831条1項3号を検討することになります。831条1項3号の取消事由は司法試験で一番の頻出論点であり、平成18年司法試験設問2、平成21年司法試験設問6、平成23年司法試験設問②、平成25年司法試験設問2、平成29年司法試験設問2、平成30年司法試験設問3に出題されています。なお、平成29年司法試験設問2で出題された831条1項3号の取消事由は、60%の議決権株式を有する大株主が少数株主を排除する目的で株式併合の承認決議に賛成したことを理由とするものであり、株式併合を議題とする株主総会決議に関する831条1項3号の取消事由であるという点でも本問と共通しています。
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- ②では、株主総会決議に取消事由があるだけで差止事由が認められるか(決議取消判決の確定の要否)という論点まで問われていると思われます。この論点は、平成21年司法試験設問2の手段④でも問題になる論点であるという意味で、平成21年司法試験設問2と共通します。
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- ③のうち、182条の4に基づく株式買取請求は平成29年司法試験設問3で出題されています。
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このように、令和2年司法試験商法論文は、全体的に司法試験過去問との関連性が強いです。
同じ論点が出題されたり、同種の現場思考問題が出題されることが多いため、再度の出題可能性に備えるという意味で司法試験過去問をやる必要性が高いですし、頻出分野である役員等の対会社責任(会社法423条1項)・対第三者責任(会社法429条)等における書き方のコツマスターするという意味でも司法試験過去問をやる必要性が高いです。
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2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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