加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

令和2年司法試験論文と司法試験過去問との関連性「行政法」 7位/40%

今回の記事では、令和2年司法試験「行政法」論文と司法試験過去問との関連性について説明いたします。

司法試験過去問との関連性は40%です。

司法試験過去問と共通しているのは、設問1(1)の本件計画変更の処分性における判例理論と法効果性の問われ方、設問1(1)の本件申出の拒絶の処分性における判例理論、及び設問2の現場思考問題における対処法です。

設問1(1)本件計画変更の処分性


①出題の角度の共通性

設問1(1)では、農振法13条に基づく農業振興地整備計画の一環としての農地利用計画の変更(=本件計画変更)の処分性と本件計画変更を求める本件申出に対する拒絶の処分性が問われています。

このうち、前者は、出題の角度及び参考にする判例理論という点で、司法試験過去問と共通します。

会議録では、本件計画変更の処分性を検討する際には「農用地区域を定める計画自体の法的性格を検討してみてください」とあります。

これは、農振法8条に基づく農地利用計画(=本件計画)に直接具体的な法効果性が認められるのであれば、これを変更することになる農地利用計画の変更(=本件計画変更)にも本件計画の直接具体的な法効果を直接具体的に変動するものとして直接具体的な法効果性が認められるという考えを前提として、本件計画変更の法効果性の有無・内容について、本件計画変更自体ではなく、これにより変更される本件計画の法効果性の有無・内容から検討させるというものです。

この出題の角度は、平成29年司法試験設問2(1)と共通します。

平成29年司法試験設問2(1)は、道路法9条に基づく路線廃止(当該道路の全部又は一部を廃止すること)の処分性を問う問題で、路線廃止の法効果性の有無・内容について、路線廃止自体ではなく、路線廃止により消滅することになる道路法18条に基づく道路の区域の決定及び供用の開始の法効果性の有無・内容から検討させるものです。

②判例理論の共通性

前記①の通り、本件計画変更の直接具体的な法効果性の有無については、本件計画変更により変更されることになる本件計画の法効果性の有無・内容から検討することになります。

本件計画の法効果性の有無・内容を検討する際には、本件計画自体の法効果性の有無・内容だけでなく、本件計画に続く後続行為との連動性を根拠とする法効果の前倒し的な読み込みの可否も検討することになると思われます。

土地区画整理事業計画決定の処分性を肯定した最大判平成20・9・10(百Ⅱ152)は、土地区画整理事業計画決定がな「されると、特段の事情のない限り、・・施行地域内の宅地について換地処分が当然に行われることとなる」という土地区画整理事業計画決定と換地処分との間における強い連動性を根拠に、後続行政過程において発生する事態を先行行政作用の作用として前倒し的に読み込むことで、土地区画整理事業計画決定の直接具体的な法効果性を肯定しています(「行政判例百選」第7版・事件160の角松生史解説)。

この判例理論は、平成20年司法試験設問1(介護保険法上の勧告の処分性)、平成24年司法試験設問1(都市計画法上の都市計画施設を定める都市計画決定の処分性)及び平成25年司法試験設問1(土地区画整理法上の定款変更認可の処分性)でも出題されています。

 

設問1(1)本件申出の拒絶の処分性


会議録では、本件申出の拒絶について、㋐本件運用指針で明記されているとどまることに着目して法令上の根拠の有無(公権力性の一要素)を検討することと、㋑「本件計画の変更の段階での抗告訴訟による救済の必要性も、検討」することが誘導されています。

㋑は、本件計画変更の処分性にもかかっているの定かではありませんが、少なくとも本件申出の拒絶の処分性にはかかっています。

土地区画整理事業計画決定の処分性を肯定した最大判平成20・9・10(百Ⅱ152)では、土地区画整理事業計画決定の段階での抗告訴訟による権利救済の必要性も根拠の一つにしており、病院開設中止勧告の処分性を肯定した最二小判平成17・7・15(百Ⅱ160)では、病院開設中止勧告の法効果性を否定する一方で病院開設中止勧告の段階での抗告訴訟による救済の必要性を根拠にして例外的に処分性を肯定しています。

このように、近年の最高裁は、処分性が問題となっている行為の段階での抗告訴訟による救済の必要性を根拠として処分性を肯定するというロジックを使う傾向にあります。

この判例理論は、平成20年司法試験設問1(介護保険法上の勧告の処分性)及び平成24年司法試験設問1(都市計画法上の都市計画施設を定める都市計画決定の処分性)でも出題されています。

 

設問2


設問2では、本件申出の拒絶の取消訴訟において原告Xがどのような違法事由を主張するべきかについて、会議録の誘導に従って論じることが求められています。

同じ問題が司法試験過去問で出題されているわけではありませんが、違法事由について会議録の誘導に従って検討させる問題のうち、行政裁量を使わない現場思考型の問題は、司法試験過去問でも何度か出題されています。

行政裁量を使わない点、会議録で違法事由が2つ誘導されている点、及び個別法の仕組みが複雑である点で、平成28年司法試験設問4との共通性が強いと思いました。

平成28年司法試験設問4等の演習・分析を通じて、㋐会議録の誘導に従い違法事由について2つの観点から検討する、㋑理由⇒解釈による規範定立⇒当てはめという形式を守る、㋒上記㋑の過程で会議録のヒントにも言及する、㋓個別法の仕組みを理解し切れなくても論述の形式を守るなどして誤魔化すといった受験技術が身についていれば、令和2年司法試験設問2でも合格水準の答案を書くことができます。

 

以上が、令和2年司法試験「行政法」論文と司法試験過去問との関連性についてです。

今年は珍しく、行政裁量が出題されることもなく、司法試験過去問からの出題が少なかったですが、普段なら、行政法は、刑事訴訟法と同じかそれ以上に、司法試験過去問からの出題が多いです。

これまでの出題傾向を踏まえると、行政法では、司法試験過去問だけで出題範囲の大部分をカバーすることができるはずです。このことに、「読解・思考・書き方」が重視されることも併せ考えると、司法試験過去問を使った演習中心の勉強をすることが論文対策として非常に効果的であるといえます。

これから司法試験過去問をやる方、司法試験過去問をやっているのに答案の水準が上がらない方などには、科目・分野ごとの「知識」だけでなく科目・分野ごと「読解・思考のコツ、書き方のルール」が集約された『秒速・過去問攻略講座2021』を受講することで、確実で効率的な過去問学習をして頂きたいと思っております。

 

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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