司法試験の初日、本当にお疲れ様でした。
司法試験の初日は、試験時間が一番長いですし、一番緊張すると思います。
緊張から前日に十分眠れなかったり、復習が間に合わないため睡眠時間を削って試験に臨んだという方もいると思います。
今日は、しっかりと休み、明日の民事系論文に向けてコンディションを整えましょう。(2023.7.12 追記)
今回の記事では、出題内容に左右されることなく安定して合格答案を書くための【科目単位のコツ】のうち、民事系に関するものを紹介いたします。
民事系論文で頭をフル回転させるためにしっかりと休む
2つ目の民事系論文では、頭をフル回転させる必要が高いです。
無理をして知識を詰め込むよりも、ちゃんと休んで脳を回復させることを優先しましょう。
どんなに知識を詰め込んでも、頭の回転が鈍くなっているため問われていることに気が付けない、問われていることを上手く法律構成できない、脳内で構成したことを上手く文章に表現できない、書き切れないのでは、点数に繋がりません。
また、これまでインプットしてきたことは試験本番で意外と記憶喚起できるものですし、規範等が多少不正確でも点が付きます。
さらには、規範を失念した場合であっても、現場思考問題における対処法と同様、問題文から出題者が求めている当てはめをイメージして、その当てはめができるような規範を導くという方法により、それっぽい(少なくとも当てはめと整合する)規範を導くことが可能ですから、ぎりぎり合格水準の論述をすることも可能です。
現行司法試験の論文では、暗記の量と正確性ではなく、思考力・文章力・処理能力・科目分野特有のルールに重点が置かれているため、これらをフルに発揮できるようにコンディションを整えることを優先しましょう。
民 法
①訴訟物又は請求の根拠(請求原因の組み方)から考える
訴訟物又は請求の根拠によって、実体法上の要件、請求原因と抗弁以降の要件事実、これらに紐づけられた論点が明らかになります。
②主張・反論を要件事実的に分析する
主張・反論を要件事実的に分析することが攻撃防御方法や論点の抽出に役立つことがあります。
例えば、被告の反論であれば、請求原因事実に対する否認なのか、それとも、請求原因事実を前提とした抗弁なのかという分析をする必要があります。
原告の再反論であれば、被告の反論が抗弁である場合には、抗弁事実に対する否認なのか、それとも抗弁事実を前提とした再抗弁なのかを分析します。
③要件検討の網羅性、論理的順序
ある請求や抗弁(再抗弁以下を含む)が認められるという結論を導く場合、その請求や抗弁に対応する要件を全て認定する必要があります。
これに対し、消極の結論を導く場合、充足しない要件まで検討すればよく、それ以降の要件検討は不要です。
もっとも、後者の場合でも、要件検討の論理的順序を守る必要があります。例えば、不当利得返還請求なら、「利得・損失⇒因果関係⇒法律上の原因の不存在」という流れで検討する必要がありますから、法律上の原因の不存在が認められない場合でも、利得、損失及び因果関係を先に認定する必要があります。
④原則・修正型の現場思考問題の対処法
原則・修正型の現場思考問題では、条文の形式的適用による原則的結論を示した上で、問題文のヒントから窺われる修正の必要性(原則的結論が妥当でないという価値判断)に従って、原則的結論を修正するための抽象論(理由+規範)を導きます。
問題文のヒントから出題者が求めている当てはめの内容及び方向性が窺われる場合には、出題者が求めている当てはめをできる規範を理由とともに導くという、当てはめから逆算した抽象論の導出が有効です。
⑤ルールの射程を問う問題の対処法
民法では、条文・判例の射程(応用)を問う出題が頻出です。
こうした問題では、条文・判例の根拠を示した上で、その根拠が別の事案類型又は別の論点にも妥当するかどうかを論じます。この論述形式を守ればなんとかなります。
商 法
①とにかく最後まで書き切る
会社法の問題では、検討事項が多く最後まで書き切るのが難しいこともあります。
こうした問題では、最後まで書き切るだけで相対評価で上に行くことができますから、とにかく最後まで書き切りましょう。
②条文操作では、過剰な文言引用はしない
条文操作をする際、条文番号を指摘することは必須ですが、過剰な文言引用をすることにならないよう、気を付けましょう。
条文の文言のうち核になっている部分さえ引用すれば足ります。答案の形式に過度に囚われるのではなく、答案の中身を優先しましょう。
③わからない問題、現場思考問題の対処法
分からない問題や現場思考問題では、使えそうな条文を見つけた上で、条文を出発点として、「条文の趣旨→文言の解釈としての規範の定立→当てはめ」という形式で答案を書けば、なんとかなります。
関連して、会社法でも、民法と同様、条文・判例の射程(応用)を問う出題が頻出です。論じ方は民法と同様であり、条文・判例の根拠を示した上で、その根拠が別の事案類型又は別の論点にも妥当するかどうかを論じます。
④法律関係図の重要性
会社法では、会社同士の関係、株主・役員の構成、公開・非公開等といった事実関係を「図」の形にして把握することが重要です。
会社同士の関係、株主・役員の構成、公開・非公開等といった事実関係を「図」として一目で確認することにより、初めて気がつける検討事項もあります。
事実関係を会社法上の制度に関連付けて把握することができなければ、ちゃんと記憶しているAランクの条文・手続・論点でも落としてしまうというのが、会社法の怖いところです。
⑤必ず確認するべき論点
利益相反取引、一人会社・一人株主間の利益相反取引、株主全員の同意、特別利害関係株主による議決権行使は、本当に落としやすいので、必ず確認しましょう。
⑥原則として判例の立場で書く
会社法では、民法と異なり、判例に従った論述が重視されており、判例の立場が明確である論点については、仮に判例以外の立場で論じる場合には、判例を批判した上で自説を導く積極的な理由付けまで書く必要があります。ここまでやって初めて、判例だけで書いた場合と同等の評価を得る余地が出てきます。
それなら、初めから判例だけで書いた方が得点効率が高いですから、判例の立場が明確である論点については、判例で書くべきです。
民事訴訟法
①会話文で指示される論述の観点&立論の方向性に従って論じる
民事訴訟法では、会話文において、ある問題点について「こういった観点から論じなさい」、「こういった方向性で論じなさい」というように、論述の観点や方向性が指示されることがあります。
会話文を読む際には、必ず、論述の観点と方向性に関する指示の有無・内容を確認しましょう。
②理論体系に従って考える
民事訴訟法では、理論体系に従って考えることが論点抽出及び法律構成にとって非常に有益です。
例えば、「~の判決をすることができるか」という問いであれば、まずは処分権主義(246条)との関係で訴訟物レベルのことを確認し、次に弁論主義との関係で「~の判決」をするために判決の基礎にすることになる事実についての主張の要否及び有無を確認し、最後に当該事実についての証明不要効(179条)の有無を確認することになります。
判決の拘束力が問われているのであれば、㋐判決主文のうち訴訟物に対する判断(114条1項の既判力)、㋑判例主文のうち責任に対する判断(既判力に準ずる効力)、㋒判決理由における相殺の抗弁における自働債権(対抗額に限る)に対する判断(114条2項の既判力)、㋓判決理由における相殺の抗弁における自働債権(対抗額に限る)以外に対する判断(争点効又は信義則)のうち、どこの拘束力が問題になっているのかから考えます。
③マイナー分野からの出題、分からない問題における対処法
令和1年司法試験設問1における管轄など、マイナー分野からの出題や分からない問題でこそ、問題文のヒントとしっかり向き合って何が問われているのかを確認し、使えそうな条文を探し、条文の趣旨を出発点として条文解釈による規範定立をしてから当てはめに入りましょう。
条文の趣旨を記憶していない場合には、「仮にこの条文がなかったらどういった不都合があるのか」ということをイメージしてみると、条文の趣旨に近いことを導けます。
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