前回の記事では、安定して合格答案を書くための【全科目に共通するコツ】を紹介しました。
今回の記事では、出題内容に左右されることなく安定して合格答案を書くための【科目単位のコツ】のうち、公法系と労働法に関するものを紹介いたします。
憲 法
①何について・どう論じるのかを問題文のヒントから判断する
近年の司法試験では、被侵害権利として取り上げるべき人権、規制の仕組み(何のために、何を、どう規制しているのか)、規制の問題点について、問題文で分かりやすく誘導してくれます。
したがって、人権選択から目的手段審査による当てはめに至るまで、何をどう論じるべきかについて問題文のヒントに従って考えることが極めて重要です。
②違憲審査の基本的な枠組み
近年の司法試験では、保障→制約→違憲審査基準の定立→当てはめ(目的手段審査)という違憲審査の基本的な枠組みが重視されていますから、問題文のヒントと参考判例を上記枠組みに落とし込んで答案で使いまくりましょう。
特に、問題文のヒントについては、使い方が分からない場合でも、どこでどう使っても構いませんから、とにかく答案にねじ込みましょう。
③判例理論に引きずられすぎない
判例の類題が出題されても、無理に最初から最後まで判例に従って書く必要はありません。場合によっては答案が崩壊したり、違憲審査の体を成さないことにもなりかねません。
学説の違憲審査の枠組みに従った論述の一過程で、判例を引用したり、判例を参考にした論述をすれば足ります。
この意味で、判例は答案の構成するパーツの一つにすぎません。
行政法
①設問及び会議録における論述の形式・方向性に関する指示に従う
行政法では、設問や会議録において、論述の形式(主張反論型、三者間形式など)と論述の方向性について指示されることが多いです。
ここで間違えると大失点につながる危険があります。
②重要な指示・誘導を落とさない工夫
事案、設問、会議録において重要な指示・誘導が出てきたら、その都度、構成用紙にメモするという工夫も有効です。
③論述の中身に関する指示・誘導との向き合い方
行政法では、設問や会議録において、何について・どう論じるかについて誘導されるので、どれだけ誘導に従って答案を書くことができるかが肝になります。
もっとも、細かい誘導まで拾おうとした結果、法律構成全体が歪んでしまう危険がある場合には、答案戦略上、細かい誘導を飛ばすのもありです。無理に枝・葉レベルの誘導まで答案に反映しようとした結果、幹レベルのことまで崩れてしまうのでは、本末転倒です。
幹レベルの誘導についてしっかりと論じることができれば、少なくとも合格水準には到達します。
④処分の違法事由に関する法律構成
処分の違法事由の検討において、法律構成が分からなくても、行政裁量や要件解釈による規範定立など、何らかの法律構成を示しましょう。
問題文中の事実の摘示・評価は、法律構成という皿の上でしなければ、ほとんど評価されません。
大事なことは、法律構成の内容ではなく、法律構成を示した上で事実の摘示・評価をするという論述の形式を守ることです。
労働法
①第1問と第2問の時間配分
第1問と第2問の時間配分に気をつけましょう。
開始1~2分で各問題にざっと目を通し、問題ごとの点の取りやすさや所要時間等を確認してから第1問に入ると時間を有効活用できます。
②紙面不足にも気を付ける
労働法では、人によっては、時間ではなく紙面が足りなくなることもあるので、基本7科目に比べて字を小さくしたり詰めて書くなどの工夫を要することもあります。
③規範を失念した場合の対処法
規範を失念しても、とりあえず規範を書きましょう。
論文試験の採点方式は原則として加点方式ですから、書かないよりも書いたほうが点に繋がります。
規範を書かないと、いかなる法的観点に従って事実を摘示・評価しているのかが読み手に伝わらないので、間違った規範でも書いた方が点に繋がります。
④現場思考問題の対処法
近年、毎年のように、第2問で現場思考論点が出題されています。
もっとも、難しいことは問われておらず、問題文のヒントから問題の所在と当てはめを把握して、求められている当てはめができるような規範をその場ででっち上げることにより、合格水準の答案を書くことができます。
⑤第2問でも労働保護法から出題される
令和4年は、第2問でも正面から労働保護法(労使慣行、就業規則の不利益変更、短時間有期雇用労働法)が出題されており、労働保護法と労働組合法の出題比率は8:2くらいです。
労働保護法と労働組合法の学習範囲の違いを踏まえた出題であると考えられます。
今後も、第2問で労働保護法を正面から出題される可能性があります。
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