司法試験でも予備試験でも、論文試験は、加点要素に言及した分だけ加点される点取りゲームですから、分量が多い方が点数を取りやすいです。
もちろん、単に分量が多ければいいというわけではなく、点が付く書き方をする必要がありますし、一つひとつ凝縮して書く必要があります。
私は、司法試験では、答案8枚中5枚程度で、論文2桁に入ることは可能であると考えています。
実際、私の場合、平均5枚程度(1行あたり27~30文字)で、受験者8015人中36位でした。
ただし、1桁に入るためには、どんなに文章を書くのが上手くても、少なくとも平均6枚程度は必要だと思います(特に、公法系・刑事系・商法では、5枚程度だと取れる点数に限界があります。)。凝縮された答案を書くスキルが高くないのであれば、平均7枚は必要になると思います。
司法試験で論文1桁に入るためには各科目で2桁前半の答案を揃える必要があり、そのためには大中小に分類される配点項目のうち小の部分(事実等)でも点数を稼ぐために分量が必要とされるからです。
私みたいに平均5枚前後でまとめるタイプだと2桁前半が限界で、そこから1桁まで伸ばすために必要なのは、「質」ではなく「量」です。
私の平成26年司法試験の成績
(論文試験)
公法系科目 133.18(約100位)
民事系科目 186.31(約200位)
刑事系科目 126.87(約160位)
労働法 76.60(1位)
合計 522.98(36位)
(短答試験)
上三法 152点/175点
下四法 118点/175点
合計 270点(612位)
(総合)
1050.21(39位)
※ 平成26年司法試験の総合評価はこちら
平成26年司法試験の再現答案
私は、試験終了後、2日間で一気に8科目分の再現答案を作成しました。したがって、再現答案の再現性はかなり高いです。
なお、受験生時代の答案であるため、間違っている箇所が多々ありますので、ご了承くださいませ。
【憲法】
行政法は、設問2で職権撤回を丸々落としている上、設問3が実質途中答案であるため、60~65点くらいだと思います。憲法は68~73点くらいだと思います。
憲法におけるミスは、条例の制定過程に着目した隠れた立法目的について「立法目的は消極目的か積極目的か」という形で論じたことくらいです。ただ、採点実感が公表されるまではこれが間違った論じ方であるとは思っていませんでしたし、条例の制定過程に着目して地元優遇目的があったか否かを論じている点においては出題趣旨に沿っているため、相対評価の下では高評価を得ていると思います。
【行政法】
行政法における大きなミスは、①設問2で職権取消しを丸々落としていることと、②設問3が実質途中答案であることです。
点数は、60~65点くらいだと思います。
【民法】
民事系の出来は、民法>商法>>>民事訴訟法です。
民法70点、商法65点、民事訴訟法50点くらいだと思います。
民法は、特に大きなミスはありません。
【商法】
商法は65点くらいです。
会社法では設問を跨いだ答案全体の論理的整合性も重視されていることを知っていたため、とにかく、設問1におけるEが代表取締役でも取締役でもないという認定を前提として、それと整合する法律構成を設問2・3でも展開しようと心掛けました。
大きなミスは、設問3を利益相反取引で論じていることです。
会社法では、答案構成の途中で時間が足りないことが分かったので、とにかく最後まで書きるために、設問2の答案構成を終えた段階(開始45~50分)で答案を書き始めました。
【民事訴訟法】
民事訴訟法は50点くらいです。
全問、訴訟上の和解に関する現場思考問題であり面喰いましたが、とにかく原理原則などに遡って論じることを心掛けました。
最大のミスは、設問1において、訴訟手続における表見法理の適用に関する「手続の安定」という問題点について、正しくは「表見法理の適用が手続の不安定を招くという点については、それが善意悪意という主観的要件によって訴訟行為の効力が左右される結果となることについての指摘であること」(平成26年司法試験・採点実感)であるにもかかわらず、「表見法理の適用を否定すると手続安定が害される」として真逆の論述をしてしまったことです。
答案を書いている途中で違和感があったのですが、とにかく最後まで書き切るために、違和感を無視して答案を書き進めました。
【刑法】
刑法と刑事訴訟法とで、大きな点差はないと思います。
刑法は、罪名や法律構成レベルでの解答筋は外していませんし、検討事項も網羅しています。丙について、不作為による殺人罪の同時正犯としている点は、強引な認定であるとは思いますが、不作為の幇助まで論じると法律構成が複雑になり途中答案になると思ったので、敢えて不作為の殺人罪の同時正犯であると認定して丙の罪責に関する論述を早めに切り上げました。
【刑事訴訟法】
刑法と刑事訴訟法とで、大きな点差はないと思います。
法律構成レベルでの解答筋は外していませんし、論点も事実も網羅しています。
設問3では、訴因変更の要否について、公判前整理手続において訴因変更の要否が問題となっているという特殊性を無視して論じていますが、これは大部分の受験生が対応できていないので、相対評価の下ではミスですらないと思います。
【労働法】
労働法では、第1問の設問1において、黙示の職種限定合意の成否を論じるべきところを、職種限定合意の成立を2行で否定した上で、労使慣行の拘束力という構成で論じてしまっています。それにもかかわらず、労働法で1位の評価を得ることができた理由は、当時は配転命令の有効性を検討する過程で黙示の職種限定合意の成否を大展開するということがあまり知られていなかったことと、労使慣行というあり得る法律構成を採用した上で問題文の事実を網羅的に摘示・評価したことにあると考えられます。
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