加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

総まくり講座2021の論証を修正することの適否

論証の納得と妥協について、質問がございます。
私は、旧司法試験時代、択一は毎年受かるものの、論文に落ち続けましたが、最近、法科大学院に既修で入学し、十数年ぶりに司法試験の勉強を再開しました。
旧司法試験時代を振り返ると、予備校の論証例に納得がいかないと多数の基本書や判例集を調べ、徹底的に修正を試みました。しかし、結局は時間が足りなくなり、また覚える時間の確保もできず、本試験を迎えていたように思います。多数の本を調べても結局解決できなかったことも多数ありました。
ところで加藤先生のブログや他の講師や合格者ご発言からは、論証(特に理由付け)の良し悪しは合否にさほど関係ないように思います。ただ、他人の作成した論証は、自分が理解、納得できないとなかなか覚えられないのも事実です。
今後、加藤先生の講座を受講予定ですが、論証例などで自分が納得いかない、理解できないものについては、他の書籍等で修正を試みることはやめて、信頼してそのまま覚えようと思いますが、このような態度でもよろしいものでしょうか。
また、自分が理解できない箇所をメール等で質問できる制度でしょうか?(今考えているのは、1冊だけ調べて、分からなければメール等で質問しそれでも解決できなければ深追いせずにそのまま暗記する感じでいこうと考えています)

第1に、「旧司法試験時代を振り返ると、予備校の論証例に納得がいかないと多数の基本書や判例集を調べ、徹底的に修正を試みました。」というところまでが、法科大学院在学中の私と酷似しています。おそらく、変に完璧主義なところがあるのだと思います。私も、法科大学院合格後から司法試験初受験までの2年半、伊藤塾教材だけで作成した論証を捨てて、1000個以上ある論点について、自分が納得できる完成度の論証を作るために、基本書・判例集・調査官解説を読み漁るとともに、ひたすら論証ノートを作るという作業に明け暮れていました。

私は自分が書いた文章ならすぐにほぼ完璧に記憶することができるタイプだったので、記憶が間に合わなかったということはありませんでしたが、司法試験過去問をやる時間を確保することができませんでした(受験1回目は、論文過去問どころから、短答過去問すらやらないで受験することになりました)。

第2に、私の総まくり講座2021の受験を検討して頂きありがとうございます。私の講座の論証の完成度の高さからすると、「内容面」について修正する必要はありません。手前味噌になりますが、私は受験生時代の大部分を論証作成に使い、合格後もずっと様々な書籍を参照して論証の完成度を高めてきましたので、私の論証の完成度は極めて高いです(ここまでが、修正の必要性がないという話です)。因みに、司法試験・予備試験対策としての論証作成では、ただ基本書に書いてある記述をまとめればいいという簡単なものではありません。論点ごとに、どの見解で書くべきか、さらには同じ見解の中でもどの先生の考え方・表現の仕方を採用するべきかについて、全年度分の司法試験の出題趣旨・採点実感・ヒアリング、過去及び現在の考査委員の顔ぶれなども参考にしながら、司法試験・予備試験対策としてベストな論証(すなわち、司法試験・予備試験におけるルールである司法試験員会の理解に限りなく近い論証)を作成する必要があります。

また、法科大学院在学中は学内の授業・定期試験対策にも時間をとられますし、司法試験過去問の演習・分析や短答過去問集のやり込みにも相当な時間を要しますから、総まくり講座2021の論証を修正している時間的余裕はないと思います。特に、質問者様の性格と過去の経験からすると、再び論証作成にのめり込んでしまい、他にやるべきことができないという事態に陥る危険性が高いです。

さらに、ご自身で論証を修正する場合、間違った論証になる可能性がありますし、論点相互の関係の整合性が保てなくなる可能性もあります。例えば、総まくり講座2021では、共同正犯の処罰根拠について相互利用補充関係説ではなく因果共犯論により一元的に理解する立場を前提として共同正犯に関する論点の論証を作成しているので、質問者様が相互利用補充関係説又はそれに近い立場に従って共同正犯に関するある論点の理由付けを書き換えると、因果共犯論を前提とする他の論証と整合しなくなります。

ただし、「他人の作成した論証は、自分が理解、納得できないとなかなか覚えられない」という悩みを踏まえて、お薦めできる勉強法がございます。それは、論証の「内容」ではなく「長さ」を修正するということです。総まくりテキストや総まくり論証種の論証よりも長くするということはまずないと思いますから、総まくりテキスト又は論証集の論証を自分が「記憶することができ、かつ、120分の制限時間内で答案に書き切れる分量」のものに修正して頂くことをお薦めいたします。総まくり論証集の論証はコンパクトにしてますが、商品としての品質を維持する必要があることと、上位合格を目指している方もいることなどから、1位~2桁前半を目指せる水準を維持できるだけの長さは保っています。なので、人によっては、正確性を落とすことでもっと短くすることができます。

しかも、自分に合った長さの論証が完成することの他に、論証を短くする過程で、理由付けや規範の核心部分(ここは削れないという部分)はどこかということを考えることになるため論証の理解が深まる(さらには、理解が深まることが記憶を促進する)、自分で文書を作成するため文章力も身につく、何度も同じ論証を読むため記憶も定着しやすいといった利点もあります。是非、実践して頂ければと思います。

なお、講座の内容に関するご質問は、加藤ゼミナールのお問い合わせでは受け付けておらず、本ブログの質問コーナーでのみ受け付けさせて頂くとともに、契約内容には質疑応答は含まれておりません(本ブログ会員規約及び弊社サイト会員規約参照)。私が法律の内容面について回答することができるご質問の数は、1日2~3件ですから、あくまでもその範囲での任意での対応となります。この点につき、ご理解いただけますと幸いでございます。

論証の記憶や修正については、こちらの記事も参考にして頂けると思います。

2021年05月23日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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