加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

令和3年司法試験行政法設問1(1)で処分性を否定する答案の評価

お世話になっております。今年の司法試験を受験した者です。今年の行政法について質問がございます。
先生は平成7年の公共施設管理者の不同意の判例に引き付けて処分性が否定されるのではないかという問題意識を示したのちに2つの理論を援用して処分性を肯定する解答例を示しておられたと思います。
私は現場では、処分性を肯定する2つの理論について思いが浮かばず、市長からの決定通知がなければ申請することすら出来なくなるため、処分性が認められるように思える、という問題意識を示した後に、公共施設管理者の不同意の判例理論を紹介し、本件でこれが妥当するため処分性が認められない、という結論を示して設問1は終わりました。やはり処分性を肯定しない私のような答案には低い評価しかつけられないでしょうか?
ご回答いただけると幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

まず、私の訂正後の解説で言及している通り、本件不選定決定の処分性は、申請権アプローチによって検討するというのが正解筋であると思われます。もっとも、申請権アプローチで論じている答案はそこまで多くないと思いますから、公共施設管理者の不同意に関する判例を使って論じても、合格水準に到達します。

次に、問題文34行目では、Bから相談を受けた「弁護士Dの指示に応じる弁護士Eの立場に立って、設問に答えなさい」との指示があるため、設問1(1)(2)のいずれについても、原告訴訟代理人の立場として論じることになります。したがって、原告訴訟代理人の立場として「なんとかして処分性や訴えの利益を肯定することはできないか」という姿勢で答案を書く必要があります。必ず処分性や訴えの利益が認められるという結論にしなければいけないわけではありませんが、仮に否定する場合には、相当説得力のある論述をする必要があります。

なので、原告にとって不利である公共施設管理者の不同意に関する判例理論を紹介し、判例理論自体の当否やその射程について十分な検討を経ることなく、判例理論を根拠として処分性を否定しているのであれば、少なくとも設問1(1)についてはあまり高く評価されないと思います。

もっとも、設問1(1)は難しいため、受験生全体の水準が低いでしょうから、設問1(2)及び設問2で十分挽回することができると考えます。

参考にして頂けますと幸いです。

2021年05月25日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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