加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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平成22年司法試験刑事訴訟法 「会話の存在と内容」という立証趣旨から導かれる要証事実

いつもお世話になっております。秒速・総まくり2021を受講している者です。
総まくり刑事訴訟法でも扱われる伝聞法則に関する司法試験過去問についての質問がございます。
平成22年司法試験設問2では、検察官の立証趣旨が「会話の存在と内容」にあり、そこから導かれる「甲乙間でそのような内容の会話がなされたこと」という要証事実との関係では、甲乙の供述の内容の真実性は問題にならないとして、捜査報告書中の甲乙の会話部分は伝聞証拠に当たらないとされています。
「会話の存在」だけが要証事実であれば甲乙の供述の内容の真実性が問題にならないということについては納得できるのですが、「そのような内容の会話」という部分も含まれている場合には、その内容の真実性が問題になるのではないかと思っています。どのように理解すれば宜しいでしょうか。

拳銃譲渡に関する甲乙間の会話の使い方としては、①要証事実を甲乙間の会話の内容の真実性を前提としたものにする(甲乙間の会話の内容たる事実を要証事実とする)、②甲乙間でそのような内容の会話がなされたことを要証事実とする、③甲乙間で何らかの会話がなされたことを要証事実とする、という3パターンが想定されます。

①は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲と乙が拳銃譲渡の合意をした」という主要事実を直接に証明するというものです(直接証拠型)。この場合、要証事実との関係で甲乙の会話の内容の真実性が問題となるため、伝聞証拠です。

②は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話がなされた」という間接事実を証明することにより、この間接事実から「甲と乙が拳銃譲渡の合意をした」という主要事実を推認するというものです(間接証拠型)。①と違い、要証事実は「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話がなされた」という間接事実です。仮に甲乙の会話の過程で冗談・言い間違えがあったとしても、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話がなされた」ことを推認することは妨げられません。仮に甲乙の会話の過程で冗談・言い間違えがあった場合、捜査報告書中の会話部分(証拠)→「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話がなされた」(間接事実)という推認ではなく、「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話がなされた」(間接事実)→「甲と乙が拳銃譲渡の合意をした」(主要事実)という推認が妨げられることになります。このように、甲乙の会話の過程に誤りがあったとしても、証拠から要証事実を証明(推認)することの妨げにはならないのですから、「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話がなされた」(間接事実)という要証事実との関係では甲乙間の会話の内容の真実性は問題にならない、ということになります。

③は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲乙間で何らかの会話がなされた」という間接事実を証明することにより、この間接事実から「少なくともその時点では甲と乙が面識を有していた」という間接事実を推認し、ひいては甲乙間の共謀等の主要事実を推認するというものです(間接証拠型)。この場合も、非伝聞です。

2020年12月25日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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