加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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買主が目的物の占有移転を求める場合における訴訟物

民法の問題を解いていて、「これは所有権に基づく返還請求権かな」と思って参考答案を見たら、「売買契約に基づく目的物引渡請求権」と書いてありました。 両者はどのように区別すればいいのでしょうか。

例えば、XがYに対して動産甲を売却し、引き渡しを終えていないという事例において、理論上は、①売買契約に基づく目的物引渡請求権と②所有権に基づく返還請求権のいずれを訴訴物として構成することができますが、①を訴訟物とするのが通常です。②の請求原因は㋐Yもと所有・㋑XY売買・㋒Y現在占有、①の請求原因はXY売買だけというように、①の請求原因が②の請求原因に包含されるため、①のほうが少なくとも請求原因の面では原告Yにとって有利だからです。しかも、仮にXがZに対しても動産甲を売却しており、Zに対する引渡しも終えている(178条の対抗要件具備)という事情があっても、①であれば、Xが対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を主張することができないので、所有権喪失の抗弁が出てこないという意味でも原告Yにとって有利です。

原告Yにとって、①ではなく敢えて②を選択する実益があるのは、①について消滅時効(新166条1項1号・2号)が完成しているなど、特殊なケースに限られると思います(②は、消滅時効に服しません。)。

2020年09月08日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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