加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

平成23年司法試験における513号通達は、行政裁量と行政指導指針のいずれに位置づけられるか

平成23年司法試験設問2(2)について、先生の答案では、場外発売場の設置許可の実体的要件について定める法5条2項及び同条項の委任を受けた同法施行規則12条との関係で、設置許可について自治会等の同意を要求する本件通達を裁量基準に位置づけています。もっとも、本件通達は、設置許可申請の形式的要件について定める法5条1項及び同条項の委任を受けた同法施行規則11条2項の具体的内容を明らかにするものとして発出されたものであり、設置許可の実体的要件について定める法5条2項及び同条項の委任を受けた同法施行規則12条の具体的内容を明らかにするために発出されたものではありませんから、本件通達を実体的要件に関する要件裁量における裁量基準と位置づけることはできるのでしょうか。

本件通達を法5条に基づく設置許可の実体要件について認められる要件裁量に関する裁量基準に位置づけることができるかは、本件通達が実体要件について定める法5条2項及び同条項の委任を受けた同法施行規則12条とに関するものといて発出されたものであるかと直接的な関係はないと思います。通達は法令との委任関係がないものですから、形式上は申請の形式的要件について定めた法5条1項及び同条項の委任を受けた同法施行規則11条2項に関するものとして発出されたものであったとしても、許可の実体要件として運用されているのであれば、審査基準に位置づけられることになります(申請には形式的要件と実質的要件とがあることについては、中原茂樹「基本行政法」第3版112~113頁参照)。

そして、本事案では、①自治会等の同意を許可の実体的要件の1つに位置づけることについて処分の根拠法令の趣旨・目的に照らして合理性があるのであれば審査基準、②合理性がないのであれば行政指導指針、という整理になると思います。本来であれば、合理性の有無によって審査基準・行政指導指針という性質決定がされることはないのですが、平成23年の事案では、審査基準と行政指導指針のいずれであるかが不明瞭であるため、自治会等の同意を許可の実体的要件とすることが不合理であれば、行政としては自治会等の同意を許可の実体的要件の1つではなく行政指導をする際の一指針に位置づけているのであろうと考えることになるのだと思います。

もっとも、かなり特殊な事案ですから、原則として、合理性の有無にかかわらず審査基準に位置づけるという理解で良いと思います。そうしないと、行政指導指針に当たる余地がない行政規則について、合理性がないとして行政指導指針として論じるという大間違いをしてしまう可能性があるからです。

2020年09月07日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ