加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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処分性の検討過程における行政不服審査法・行政手続法の適用除外規定の位置づけ

平成19年司法試験設問1に対応する会議録では、入管法上の退去強制事由該当の有無を判断する仕組みである「入国審査官の認定⇒特別審理官の判定⇒法務大臣ないしは権限の委任を受けた地方入国管理局長の裁決」について「行政不服審査法の適用は除外されています(同法第4条第1項第10号)」との誘導があります。これについて、行政手続法の適用除外と同様に、処分性を肯定する事情として使っていいのでしょうか。

確かに、処分性が問題となっている行為について、行政不服審査法の適用除外規定がある場合には、行政手続法の適用除外規定がある場合と同様、そのことを処分性を肯定する方向で評価することができます。処分性がないのであれば、適用除外規定がなくても行政不服審査法が適用されないのですから、にもかかわらず敢えて行政不服審査法の適用除外規定が設けられているということは、法が当該行為について本来であれば行政不服審査法が適用される「処分」であることを前提にしている、と理解することになります。しかし、設問1で処分性が問題となっているのは退去要請令書の発付であるのに対し、会議録で行政不服審査法の適用外規定があると説明されているのは「入国審査官の認定⇒特別審理官の判定⇒法務大臣ないしは権限の委任を受けた地方入国管理局長の裁決」です。そのため、行政不服審査法の適用除外については、単に、退去強制令書の発付に至るまでの経過として書かれているだけであり、退去強制令書の「発付の法的性格を解明」(会議録)する際に言及するべき要素として書かれているものではないと考えることになります。したがって、上記の認定・判定・裁決について行政不服審査法の適用を除外する旨の定めがあることを、退去強制令書の発付の処分性を肯定する事情として考慮することは求められていない上、出来ないとも思います。

なお、これは処分性の検討過程で行政不服審査法・行政手続法の適用除外規定に言及する場合全般に共通することですが、適用除外規定については、処分性の検討過程の最後に言及するべきです(例えば、公権力性との関係で論じるのであれば公権力性の検討過程の最後に、法効果性との関係で論じるのであれば法効果性の検討過程の最後に論じるべきです)。適用除外規定という手続面に関する規定は、実定法上の規定により導かれる処分性肯定という結論を反映したものだからです。例えば、保育実施解除の処分性が問題となった司法試験プレテストに関する「法学教室 特集 新司法試験プレテスト(必須科目)2006Apr.NO.307」18頁(担当:石川敏行教授)の解説では、保育実施解除に関する行政手続法の適用除外規定について、「これ・・をメインに、いきなり「処分性」に直結させるというのでは、それだけでは弱いですね。まず実体法上に根拠があり、それが手続法に反映しているはずですからね。」とあります。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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