令和2年から令和5年までの最新重要判例のうち、特に重要度の高いものを記事にしています。
【令和5年11月17日最高裁判決】「宮本から君へ」助成金不交付事件
「宮本から君へ」助成金不交付事件は、独立行政法人日本芸術文化振興会Yの理事長が、出演者Zについて麻薬取締法違反で執行猶予付きの有罪判決が確定したことを理由に、映画製作会社Xに対してZが出演する映画の制作活動を対象とする助成金を交付しない旨の決定をしたことの違法性が争われた事件です。
最高裁は、原審の判断を覆し、助成金不交付により表現行為の内容に萎縮的な影響が及ぶ可能性を根拠として助成金不交付に係るYの理事長の裁量を制限した上で、本件映画の制作活動につき助成金を交付するとZが一定の役を演じているという本件映画の内容に照らし薬物乱用の防止という公益が害されるということを、消極的な考慮事情として重視することはできないとして、「本件処分は、重視すべきでない事情を重視した結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものである」という理由で裁量権の逸脱・濫用を認めました。
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【令和5年5月9日最高裁判決】納骨堂経営許可等の取消し求める原告適格
本判決は、墓地、埋葬等に関する法律(以下「法」という。)10条の規定により大阪市長が宗教法人A寺に対して行った納骨堂の経営又はその施設の変更に係る許可について、当該納骨堂の敷地から直線距離で100m以内に所在する建物に居住している者らが取消訴訟を提起した事案において、①「法10条の規定により大阪市長がした納骨堂の経営又はその施設の変更に係る許可について、当該納骨堂の所在地からおおむね300m以内の場所に敷地がある人家に居住する者は、その取消しを求める原告適格を有するものと解すべきである。」と判示するとともに、②法10条に基づく墓地経営許可に関する周辺住民の原告適格を否定した平成12年3月17日最高裁判決との関係について、「所論引用の平成12年判決は、周辺に墓地及び火葬場を設置することが制限される施設の類型や当該制限を解除する要件につき、条例中に本件細則8条とは異なる内容の規定が設けられている場合に関するものであって、事案を異にし、本件に適切でない。」と判示し、法10条に基づく納骨経営許可等の取消しを求める原告適格について、自主条例等の違いを理由として、平成12年最高裁判決を変更することなく肯定した。
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【令和3年2月24日最高裁大法廷判決】孔子廟訴訟
本判決は、那覇市の管理する都市公園内に儒教の祖である孔子等を祀った久米至聖廟を設置することを久米崇聖会(久米至聖廟を管理する一般社団法人であり、久米至聖廟の建物等を所有している。)に許可した上で、その敷地の使用料の全額を免除した当時の市長の行為について、政教分離原則(憲法20条1項後段、89条)違反が問題となった事案において、「当該免除が、前記諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて、政教分離規定に違反するか否かを判断するに当たっては、当該施設の性格、当該免除をすることとした経緯、当該免除に伴う当該国公有地の無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。」とする空知太神社最高裁大法廷判決(平成22年1月20日)と同様の総合衡量型の判断枠組みを用いて、違憲であると判断した。
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【令和2年11月25日大法廷判決】地方議会議員に対する出勤停止についての司法審査の可否
本判決は、「出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができるというべきである。」と判示することにより、地方議会議員に対する出席停止の懲罰の適否は常に司法審査の対象になるとの判断を示し、部分社会の法理を理由として地方議会による議員に対する出席停止の懲罰の適否を司法審査の対象外とする村会議員出席停止事件判決等(最大判S35.10.19・百Ⅱ181)を変更した。
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【令和2年9月30日最高裁決定】同時傷害の特例に関する刑法207条の適用の範囲・要件
本決定は、①「他の者が先行して被害者に暴行を加え、これと同一の機会に、後行者が途中から共謀加担したが、被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合」については刑法207条の適用を肯定する一方で、②「他の者が先行して被害者に暴行を加え、これと同一の機会に、後行者が途中から共謀加担したが、被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合において、後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有しないとき」については刑法207条の適用は否定されるとの解釈を示した。
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【令和2年9月11日最高裁判決】本訴請求債権を反訴請求に対する相殺の抗弁に供することの適法性
本判決は、本訴請求債権を反訴請求に対する相殺の抗弁に供することの適法性が問題となった事案において、「請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし、他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に、本訴原告が、反訴において、上記本訴請求債権を自働債権とし、上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張すること」について、民事訴訟法142条に抵触せず、適法であると判示した。
つまり、「本訴請求債権を反訴請求に対する相殺の抗弁に供すること」のうち、㋐本訴請求債権である請負代金債権を瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を訴訟物とする反訴において相殺の抗弁に供することと、㋑本訴請求債権である瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を請負代金債権を訴訟物とする反訴において相殺の抗弁に供することの双方について、民事訴訟法142条に抵触せず適法であると判示したのである。
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