令和4年予備試験の選択科目の問題数、試験時間、出題の範囲・形式
令和4年6月2日、令和4年予備試験論文式における選択科目の問題数・試験時間が発表されました(詳細はこちら)。
以下は、発表された「司法試験予備試験の実施方針について」のうち、選択科目に関するものを抜粋したものです。
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4 選択科目
⑴ 出題方針
各法分野における基本的な知識、理解及び基本的な法解釈・運用能力並びにそれらを適切に表現する能力を問うものとする。
司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提に、予備試験の選択科目においては、基本的な知識,理解等を問うものとする。
⑵ 問題数
1問とする。
⑶ 配点
50点満点とする。
⑷ 試験時間
1時間10分程度とする。
令和3年9月16日に発表された「司法試験予備試験の論文式による筆記試験の選択科目の選定について」(司法試験委員会)という資料には、以下の通り、令和4年以降の予備試験論文式の選択科目は司法試験論文式の選択科目と一致する予定あるという趣旨のことが記載されています(全文はこちら)。
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現在司法試験の選択科目として法務省令に規定されている8科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系))と同一の8科目に係る4単位以上の修得が法科大学院の課程の修了要件とされたことなどを踏まえると、法科大学院の課程を修了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とする司法試験予備試験の論文式による筆記試験の選択科目としては、上記8科目、すなわち、①倒産法、②租税法、③経済法、④知的財産法、⑤労働法、⑥環境法、⑦国際関係法(公法系)及び⑧国際関係法(私法系)を選定するのが相当ではないかと考えています。
しかも、令和4年6月2日に発表された「司法試験予備試験の実施方針について」のうち、「4 選択科目」における出題方針では、「司法試験において、更に同様の法分野に関する能力判定がなされることを前提に、予備試験の選択科目においては、基本的な知識,理解等を問うものとする。」とあります。
これらの記載から、令和4年以降の予備試験論文式の選択科目は司法試験論文式の選択科目と一致するといえます。
では、出題範囲はどうなるのでしょうか。
前出の出題方針によると、「問題数は1問、試験時間1時間10分」とあります。
司法試験における選択科目では、問題数は大問2つ、試験時間は180分で、例えば第1問では労働保護法(労働基準法、労働契約法など)、第2問では集団的労働法(主として労働組合法)というように、大問ごとに異なる分野から出題される傾向にあります。
予備試験では大問1つの中で、設問1では労働保護法、設問2では労働組合法というように、複数の設問を通じて異なる分野から出題されることが想定されます。
従いまして、例えば令和4年は労働保護法から、令和5年は労働組合法からというように、1年に1つの分野だけから出題されるのではなく、大問1つの中で2つの分野が出題されるはずです。
よって、ヤマを張って、片方の分野しか勉強をしない(憲法であれば、統治を勉強しないで人権だけを勉強する、商法であれば、会社法だけ勉強する)という大きな分野単位で偏った勉強をすることはできません。労働法であれば、労働保護法と労働組合法のいずれについても勉強をする必要があります。
大問1つの中で複数の設問を通じて労働保護法と労働組合法を出題する問題とは、次のような問題のことです。
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【事 例】
有料職業紹介事業を営むY社は、就業規則により、以下の通り、懲戒の事由、種別及び手続について定めていた。
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第18条 従業員が次の各号の一に該当する場合は、第19条及び第20条の定めるところに従い、懲戒を行う。
1 会社の許可なく、会社の物品や機密情報を持ち出したとき。
2 会社の許可なく、会社内でビラ配布を行ったとき。
3~9 (略)
第19条 懲戒は、戒告、減給、出勤停止(14日間を限度とし、無給とする)、諭旨退職、懲戒解雇の5種類とし、会社は情状に応じて処分を決定する。
第20条 懲戒処分をする場合には、本人の弁明の機会を与えなければならない。
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Y社と無期労働契約を締結して雇用されているXは、時間外・休日労働の時間数が1か月当たり60時間を超える状態が続く中で、Y社社長のAから、午後8時以降は会社内で勤務しないようにとの通告を受けた。そこでXは、やむを得ず、求職者の個人情報等の機密情報が記録された記憶媒体(以下「媒体」という。)を、Y社の許可を得ることなく自宅に持ち帰り、自宅で深夜まで残務処理を行うようになった。そのような状況が続いたある日、Xは、会社から帰宅する電車の中でうたた寝をしてしまい、媒体の入った鞄を紛失した。
Xは、翌朝出勤してすぐに、Aに媒体を紛失した経緯を説明した。AとXは、媒体に個人情報が記録されていた求職者160人と連絡を取り、媒体紛失の経緯を説明して謝罪した。Y社は、これらの求職者160人に対し、お詫びの品として金券3000円相当をそれぞれ送付した。
Y社は、Xの前記の媒体紛失行為が就業規則第18条第1号の懲戒事由に該当するとして、Xに弁明の機会を与えた上で、同第19条に基づき、Xを7日間の出勤停止処分とした。
Y社には、Y社の従業員によって組織される労働組合Bがあり、Xも労働組合Bの組合員である。
労働組合Bは、Xの前記の媒体紛失行為にはY社側にも相当大きな落ち度があるから、Xに対する出勤停止処分は無効であると考えて、Y社の許可なく、休憩時間中に、Y社の事務所の出入り口付近において、Y社の従業員に対して、「Xに対する出勤停止処分は、Y社の責任を一従業員に押し付けるものであり、許されない。直ちにXに対する出勤停止処分を撤回せよ。」などの文言を印刷したA4サイズのビラを配布した。
Y社は、労働組合Bの組合員による前記ビラ配布が就業規則第18条第2号の懲戒事由に該当するとして、前記ビラ配布に参加した組合員全員に対して弁明の機会を与えた上で、同第19条に基づき、前記ビラ配布に参加した組合員全員を戒告の懲戒処分に処した。
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[設 問]
1.Y社がXに対して行った出勤停止処分は有効か。検討すべき法律上の論点を挙げて、あなたの見解を述べなさい。
2.労働組合Bが、戒告の懲戒処分について争う場合、どのような機関にどのような救済を求めることができるか。検討すべき法律上の論点を挙げて、あなたの見解を述べなさい。
設問1は、労働保護法のうち、主として労働契約法からの出題です。Xに対する出勤停止処分の有効性について、懲戒権の法的根拠→就業規則上の懲戒事由該当性→懲戒権濫用法理(労働契約法15条)という流れで論じることになります。
設問2は、労働組合法からの出題であり、労働組合Bは、戒告には不利益取扱い(労働組合法7条1号)及び支配介入(同法7条3号)の不当労働行為が成立することを根拠として、労働委員会には戒告の撤回命令とポスト・ノーティス命令を申し立て(同法27条)、裁判所には労働組合Bに生じた無形的「損害」の賠償を求める民事訴訟(民法709条、710条)を提起します。そして、いずれの救済との関係でも、前記ビラ配布という組合活動を理由とする戒告処分について、「労働者が…労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者…に対して不利益な取扱いをすること」として不利益取扱いの不当労働行為が成立するかと、「労働者が労働組合を…運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」として支配介入の不当労働行為が成立するかを検討することになります。
令和4年以降の予備試験論文式における労働法は、こうした出題になることが予想されます。
これから選択科目対策をする際の参考にして頂ければと思います。
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