加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

短答「刑法」で論文知識と思考・読解だけで合格点を取るコツ / 令和2年司法試験短答式を全て解説

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短答式試験の問題類型


短答式試験の問題類型は以下の3つです。

①短答知識重視の問題
②論文知識重視の問題
③思考読解重視の問題

①は、刑法であれば、第1篇・総則(1条~72条)、第2編以降の犯罪のうち論文対策として正確に記憶する必要が乏しい構成要件要素(これの解釈に関する判例知識を含む)、244条1項・2項・3項など論文対策として正確に記憶する必要が乏しい条文知識を正面から問う問題です。

②は、事例問題を通じて、論文対策として正確に記憶しておく必要のある知識を正面から問う問題等です。

判例の立場に従って因果関係の成否を判断させる問題であれば、記憶した個々の判例の事例・結論と選択肢の事例を表面的に比較して事例ごとに因果関係の成否を判断するのではなく、事案類型ごとの危険の現実化説の適用方法という論文知識を使って事例ごとに因果関係の成否を判断することになります。

個々の判例の事例と結論が正面から問われているのではなく、個々の判例の事例と結論の集積により導かれる事案類型ごとの危険の現実化説の適用方法という重要論点における判例の規範の正しい適用の仕方が問われていると理解するべきです。

関連記事として、「短答式刑法における論文的解法と丸暗記解法の違い」という記事も参考にして頂けますと思います。

③は、主として学説問題です。問題を解く際の条件として学説が明示されるため、学説そのものを知らなくても、思考・読解で選択肢の正誤等を判断することができます。

逆に、思考・読解のコツが身についていないと、知識があっても正確に正誤等を判断することができません。

令和2年司法試験の短答式刑法の問題を分析したところ、①②③に属する問題数は、①1問、②13問、③6問となりました。

①短答知識重視の問題 1問
 16
②論文知識重視の問題 13問
 1~6、8、10~12、14、15、20
③思考読解重視の問題 6問
 7、9、13、17、18、19

人ごとに、論文知識の幅が異なるため、①と②の棲み分けが若干異なる可能性がありますが、大部分は②③に属する問題であるということを認識しておく必要があります。

①②③ごとに、解法と勉強法が異なるからです。

 

問題類型ごとの解法


①短答知識重視の問題では、表面的な記憶だけで解答できる問題が多い一方で、論文知識の応用や思考読解重視の解法では正誤を判断することが難しいです。

②論文知識重視の問題では、判例の事案を敢えて修正した事例を出題してくることもあるため、判例の事案・結論の表面的な記憶で正誤を判断するという丸暗記解法では正誤判断の正確性が安定しませんから、規範適用の仕方という論文知識を使った論文的解法のほうが正誤判断の正確性が安定します。

③思考読解重視の問題では、必要とされる知識の大部分が初学段階で学習する基本的なものである一方で、思考・読解も必要とされるため、表面的に記憶したことと選択肢を形式的に比較するだけで正誤を判断することができないのが通常です。このように、知識に加えて思考・読解も必要とされるため、知識を増やすだけでは対応することができません。

なお、③では、思考・読解も必要とされますが、特別な思考力・読解力が必要とされるわけではありません。思考力・読解力を底上げするというよりも、思考・読解のコツを掴むという認識が正しいです。

 

短答式試験の傾向と対策


令和2年司法試験の短答式刑法では、論文知識だけで解ける問題と、論文知識を前提とした思考・読解により解ける問題がほとんどであり、短答固有の細かい知識を問う問題は20問中たった1~2問しか出題されていません。

学説問題の大部分は、論文知識を使った思考・読解で解けるものです。

知識の幅と深さを試したいのなら、あそこまで親切に解答する際の条件を問題文で示しません。

細かい知識を問う問題も減りました。

短答対策として、過去問全肢について正誤を導く理由を正確に説明できるまでやり込むという意味で「過去問を完璧にする」という方法もあるようですが、できる人は僅かです。

刑法については、憲法と同様、盤石な論文知識と思考・読解だけで6割程度取れる力を身につけたほうが、点数が安定します。

その後で、仕上げとして、短答固有の細かい知識も身につけることで、正答率をさらに上げる、という感じです。

短答固有の細かい知識を正面から問う問題が20問中たった1~2問しかないため、短答固有の細かい知識を増やしたところで点数はさほど底上げされないからです。

憲法・民法・刑法のうち、憲法・刑法において、過去問集や肢別問題集を何周もしておりこれらの正答率が90%を超えているにもかかわらず、初見の問題になると正答率が50~60%くらいにまで下がってしまうという方は、問題類型ごとの解法と勉強法を意識することなく丸暗記した知識を増やすだけという非効率な勉強をしてしまっている可能性があります。

科目特性を踏まえた効果的な勉強法と解法を知ることで、勉強量の割に点数が伸びないという事態を改善することができると思います。

 

令和2年司法試験短答式を全て解説


本動画では、令和2年司法試験短答式の刑法の第1問から第20問までについて、私が「リアル解答企画」で問題を解いた際の思考過程を説明しています。

本動画を通じて、近年の傾向に合った効果的な勉強法と解法を身につけて頂きたいと思います。

※1.青文字は、問題を解いた際の思考過程と正誤判断の結果

※2.赤文字は、思考過程や正誤判断の結果が間違っていた場合に、それを修正したもの

※3.動画で表示されているメモ書きが反映された問題文はこちら

 

令和2年司法試験と秒速・総まくり刑法との関連性


「令和2年司法試験リアル解答企画」における短答試験の点数は、以下の通りです。

憲法40点 民法57点 刑法43点
合計140点(243位/受験者3703人)

私は、憲法・民法・刑法のいずれについても、秒速・総まくりテキストだけで準備をしました。

前述した3つの問題類型を踏まえて選択肢ごとに秒速・総まくりテキストと比較したところ、問題の9割近くを秒速・総まくりテキストの知識と思考・読解だけで解くことができることが分かりました。

憲法と民法についても同様です。

以下では、秒速・総まくりテキストと選択肢の対応関係を示します。

メモ書きの意味

  • 秒速・総まくりテキストの記述を直接の根拠として判断することができる選択肢については、秒速・総まくりテキストの頁等、ランク、マーク・アンダーラインの有無を示す(緑文字)
  • [論点]の枠内の知識を使う選択肢については、マーク・アンダーラインの指示がある箇所であっても、問題用紙にマーク・アンダーラインありとは表示しない
  • 分野全体のランクと対応しない箇所については、ランクを表示しない
  • リアル解答企画に向けた準備で用いたのは総まくり2020テキストであるため、総まくり2021テキストと下記の頁数がずれている箇所もある

第1問 論文知識重視の問題
肢1 4頁[判例5] Aランク
肢2 7頁[判例7] Bランク
   6頁[判例6] Aランク
肢3 206~208頁 Aランク
肢4 3頁[判例2] Bランク
肢5 2頁以下 Aランク

第2問 論文知識重視の問題
肢1 199頁[論点6](類型4) Aランク
肢2 199頁[論点6](類型1) Aランク
肢3 251頁[事案類型](類型5)Bランク
肢4 251頁[事案類型](類型3)Bランク
肢5 245頁以下 Aランク

第3問 論文知識重視の問題又は思考読解重視の問題
77頁[論点1] Aランク
78頁[判例1] Bランク
78頁[判例2] Bランク

第4問 論文知識重視の問題
肢1 155頁・2 Bランク マーク
肢2 20頁[論点7] Bランク
肢3 155頁・3(1)Bランク
肢4 20頁[論点7] Bランク(参照)
肢5 155頁・3(2)~116頁・4 Bランク

第5問 論文知識重視の問題
肢ア 126頁(2)ア Aランク
肢イ 128頁(2)イ Aランク
肢ウ 136頁以下 Bランク
肢エ 136頁以下 Bランク
   40頁(2) Aランク
肢オ 140頁以下 Bランク

第6問 論文知識重視の問題
肢1 295頁[論点10] Aランク
肢2 掲載なし
肢3 289頁(3) Bランク
肢4 295頁[判例9] Bランク(参照)
肢5 292頁[判例6]~[判例9] Bランク(参照)

第7問 思考読解重視の問題
掲載なし

第8問 論文知識重視の問題
肢ア 307頁[論点4] Aランク
肢イ 307頁[論点1] Aランク
   307頁[判例1] Bランク
肢ウ 掲載なし
肢エ 掲載なし
肢オ 306頁[論点3] Aランク

第9問 思考読解重視の問題
87頁[論点2] Aランク

第10問 論文知識重視の問題
肢1 204頁 Aランク
肢2 掲載なし
肢3 255頁[論点2] Bランク
肢4 204頁 Aランク
肢5 204頁 Aランク(参照)

第11問 論文知識重視の問題
肢ア 99頁(2) Aランク マーク
肢イ 217頁・7(3) Aランク アンダーライン
肢ウ 100頁(3) Aランク アンダーライン
肢エ 104頁[論点5] Aランク(参照)
肢オ 111頁[論点6] Bランク

第12問 論文知識重視の問題
肢1~5 193頁 Bランク マーク

第13問 思考読解重視の問題
140頁[論点1] Aランク
141頁[論点3] Bランク

第14問 論文知識重視の問題
肢1 276頁・3 Bランク
肢2 277頁・4 Bランク
   278頁・5 Bランク
肢3 272頁・1 Bランク
肢4 275頁[論点7] Aランク
肢5 274頁[論点6] Aランク

第15問 論文知識重視の問題
肢1 273頁[論点2] Aランク
肢2 217頁(3) Bランク アンダーライン
肢3 267頁・5(2) Bランク アンダーライン
肢4 掲載なし
肢5 225頁[判例6] Bランク

第16問 短答知識重視の問題
肢1 187頁・1(1) Cランク マーク
   189頁・2 Cランク
肢2 187頁・1 Cランク
肢3 188頁[論点1] Cランク
肢4 掲載なし
肢5 憲法269頁(ア) Bランク マーク

第17問 思考読解重視の問題
84頁[論点1] Bランク

第18問 思考読解重視の問題
222頁[論点3] Bランク

第19問 論文知識重視の問題又は思考読解重視の問題
36頁・5 Aランク

第20問 論文知識重視の問題
テキストの財産犯全般

 

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤かとう たかし
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年 新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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