短答「民法」で価値判断と消去法で選択肢を絞り込むコツ / 令和2年司法試験短答式を全て解説

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短答式試験の問題類型


短答式試験の問題類型は3つです

①短答知識重視の問題
②論文知識重視の問題
③思考読解重視の問題

民法では、思考・読解重視の見解問題・学説問題等が出題されることはほどんどなく、ほぼすべての問題が①又は②に属する知識問題です。

しかも、憲法・刑法に比べて、論文知識だけで正誤を判断できる選択肢は少ないです。

以下が、令和2年司法試験短答式民法の問題の分類です。

①短答知識重視の問題 24問
 1、5、8、9~13、17~23、26~28、30、32~35、37
②論文知識重視の問題 13問
 2~4、6、7、14~16、24、25、29、31、36

①短答知識重視の問題は、細かい・複雑な条文や細かい判例に関する知識を正面から問う問題です。

②論文知識重視の問題は、論文対策として記憶しておく必要がある条文・判例に関する知識を正面から問う問題のことです。

いずれの問題でも、条文又はその解釈に関する判例を直接の根拠として(事例問題であれば、条文・判例を当該事例に適用することで)正誤を判断することになります。これが、正攻法としての解法です。

民法では、条文・判例の数が多いことと、短答知識重視の問題が多いことを踏まえると、平均的な知識量の受験生が「条文・判例を直接の根拠とする」正攻法により正誤を判断することができる選択肢は、多くて半分くらいだと思います。

令和2年司法試験リアル解答企画における私の短答式民法の点数は57点ですが、上記の正攻法により正誤を正確に判断することができた選択肢の数は、たったの91個/185個です。

にもかかわらず、正答率が76%である理由は、㋐組み合わせ問題であるため全ての選択肢の正誤を判断しなくても選択肢を絞り込めるという問題形式と、㋑価値判断(裸の利益衡量)により正誤を判断しやすいという科目特性にあります。

民法では、正攻法による解法だけでなく、㋐及び㋑を踏まえた受験技術的な解法も身につけておくと、少ない知識で安定して55~60点を取ることができるようになります。

 

価値判断(裸の利益衡量)による解法


法律の世界では、論理ではなく価値判断が先行しており、妥当な結論を導くための道具として法律が存在します。

法律の条文の解釈を内容とする判例についても、同様です。

民法は、特に、上記の側面が強いというか、分かりやすい形で価値判断が条文に反映されています。

そのため、「分野ごとの趣旨等を前提とした関係者の対立利益を想定した上で、裸の利益衡量をすることで導かれる妥当な結論」は、条文・判例を適用して導かれる結論と一致するはずです。

これを、価値判断による解法と呼びます。

例えば、「AがBから中古自動車を代金100万円で購入した、代金支払時期と引渡時期について特に合意しなかった、BからAに対して自動車が引渡されていない」という事案において、AがBに対して自動車の引き渡しを求めてきた場合、Bは「代金の支払いと引き換えでなければ、自動車を引き渡さない」と主張して自動車の引き渡しを拒むことができるかという問題については、価値判断による解法により、次のように考えることができます。

Bは代金の支払いを受けなくても自動車を引き渡さなければならないという結論になった場合、Bは、自動車を手放した一方でAから代金の支払いを受けることができなくなるという危険に晒されます。

このような結論はAB間の公平に反するから、BがAから代金の支払いを受けるまで自動車の引き渡しを拒むことを肯定するべきであるというのが、裸の利益衡量により導かれる妥当な結論です。

民法は、こうした事態を想定して、双務契約上の債務相互間における同時履行関係を定めています(533条)。

なので、極論すると、533条という条文の存在を知らなくても、正しい結論を導くことができます。

短答試験では結論の正確性だけが採点対象なので、選択肢の正誤を正しく判断することができるのであれば、価値判断による解法という、正攻法とは異なる解法を用いても構いません。

ここが、結論を導く過程が採点対象となっている論文試験との大きな違いです。

私は、受験生時代から、㋐条文・判例から考えて、条文・判例を適用して結論を導く、㋑条文・判例が思い浮かばない場合には、裸の利益衡量で妥当な結論を選ぶ、㋒裸の利益衡量から入って妥当な結論を導き出し、その正確性を条文・判例の検索・適用を通じて確認する、という3パターンの解法を併用していました。

解法を㋐を限定している人は、相当な知識の量と正確性がないと、安定して55~60点以上を取ることはできないと思います。

それくらい、民法は、憲法・刑法に比べて細かい知識が出題されます。

そのため、普段の学習の際に、短答固有の条文・判例知識を身につけるだけでなく、価値判断による解法も鍛えておく必要があります。

価値判断による解法には、分野ごとの趣旨等の論文知識と、論文知識を土台としてその場で適切な価値判断をするための思考力が必要です。

これらは、普段の論文の勉強と短答の演習・復習を通じて徐々に身についてくるものです。

もっとも、過去問の演習・復習では、初めに条文・判例の適用という正攻法により正誤を判断できるかを確認し、正攻法により確信をもって正誤を判断することができないのであれば、価値判断による解法によって正誤を判断することができたとしても、当該選択肢を×肢に位置づけ、次回以降の復習対象にするべきです。

価値判断でしか正誤を判断することができない選択肢を次回以降の復習対象から除外してしまうと、問題を解く手段が価値判断による解法に偏ってしまう結果、解ける問題の幅が狭まるからです。

価値判断による解法を用いた場合の判断の正確性は条文・判例の適用による解法のそれに比べて劣りますし、全ての選択肢を価値判断による解法で解くことができるわけでもありませんから、両者の関係については「原則:条文・判例の適用による解法、例外:価値判断による解法」と整理しておきましょう。

 

令和2年司法試験短答式を全て解説


本動画では、令和2年司法試験短答式の民法の第1問から第37問までについて、私が「リアル解答企画」で問題を解いた際の思考過程を説明しています。

本動画を通じて、科目特性を踏まえた効果的な勉強法と解法を身につけて頂きたいと思います。

※1.青文字は、問題を解いた際の思考過程と正誤判断の結果

※2.赤文字は、思考過程や正誤判断の結果が間違っていた場合に、それを修正したもの

※3.動画で表示されているメモ書きが反映された問題文はこちら

 

令和2年司法試験と秒速・総まくり民法との関連性


「令和2年司法試験リアル解答企画」における短答試験の点数は、以下の通りです。

憲法40点 民法57点 刑法43点
合計140点(243位/受験者3703人)

私は、憲法・民法・刑法のいずれについても、秒速・総まくりテキストだけで準備をしました。

前述した3つの問題類型を踏まえて選択肢ごとに秒速・総まくりテキストと比較したところ、問題の9割近くを、秒速・総まくりテキストの知識とそれを前提とした価値判断による解法、及び消去法により解けることが分かりました。

憲法と刑法についても、秒速・総まくりテキストの知識と思考・読解で問題の9割近くを解くことができます。

以下では、秒速・総まくりテキストと選択肢の対応関係を示します。

メモ書きの意味

  • 秒速・総まくりテキストの記述を直接の根拠として判断することができる選択肢については、秒速・総まくりテキストの頁等、ランク、マーク・アンダーラインの有無を示す(緑文字)
  • [論点]の枠内の知識を使う選択肢については、マーク・アンダーラインの指示がある箇所であっても、問題用紙にマーク・アンダーラインありとは表示しない
  • 分野全体のランクと対応しない箇所については、ランクを表示しない
  • リアル解答企画に向けた準備で用いたのは総まくり2020テキストであるため、総まくり2021テキストと下記の頁数がずれている箇所もある

第1問 短答知識重視の問題
肢ア~オ 掲載なし

第2問 論文知識重視の問題
肢ア 9頁・脚注1) Cランク アンダーライン
肢イ 436頁・2(1) Aランク マーク(参照)
肢ウ 436頁[論点1] Aライン(参照)
肢エ 掲載なし
肢オ 掲載なし

第3問 論文知識重視の問題
肢ア 25頁・3 Bランク マーク
肢イ 26頁・4 Bランク
肢ウ 39頁(3)Bランク マーク
肢エ 26頁・6 Bランク アンダーライン
肢オ 26頁・7 Bランク

第4問 論文知識重視の問題
肢ア 46頁・3(1) Bランク
肢イ 46頁・3(1) Bランク アンダーライン
肢ウ 47頁・3(1) Bランク アンダーライン
肢エ 50頁[論点6] Bランク
肢オ 51頁「論点7」 Bランク

第5問 短答知識重視の問題
肢ア 63頁・1(1) Aランク アンダーライン
肢イ 35頁 Bランク(参照)
肢ウ 65頁・イ(ウ) Aランク アンダーライン
肢エ 66頁(4) Aランク アンダーライン
肢オ 65頁(3) Aランク アンダーライン

第6問 論文知識重視の問題
肢ア 86頁・1 Bランク マーク
肢イ 87頁・3(3) Aランク
肢ウ 507頁 Bランク マーク(参照)
   63頁・1(1) Aランク(参照)
肢エ 87頁・3(2) Aランク マーク
肢オ 87頁・3(2) Aランク マーク

第7問 論文知識重視の問題
肢ア 97頁[論点7] Aランク
肢イ 30頁[論点7] Bランク
肢ウ 314頁[論点1]~[論点3]
肢エ 72頁[論点8] Aランク
肢オ 94頁(ⅲ) Bランク マーク

第8問 短答知識重視の問題
肢ア 掲載なし
肢イ 掲載なし
肢ウ 102頁・脚注8) Aランク
肢エ 101頁 Aランク マーク
肢オ 103頁 Cランク

第9問 短答知識重視の問題
肢ア~エ107頁(5) Cランク
肢オ 掲載なし

第10問 短答知識重視の問題
肢ア~オ 掲載なし

第11問 短答知識重視の問題
肢ア 掲載なし
肢イ 掲載なし
肢ウ 136頁[論点1] Cランク
肢エ 掲載なし
肢オ 掲載なし

第12問 短答知識問題
肢ア 掲載なし
肢イ 104頁・2 Cランク
肢ウ 掲載なし
肢エ 掲載なし
肢オ 掲載なし

第13問 短答知識重視の問題
肢ア~オ 掲載なし

第14問 論文知識重視の問題
肢ア 140頁・5 Aランク
肢イ 140頁[論点3] Bランク
肢ウ 143頁[論点8] Cランク
肢エ 376頁[論点3] Bランク
肢オ 掲載なし

第15問 論文知識重視の問題
肢ア 162頁・1 Aランク アンダーライン
肢イ 298頁・5(2) Bランク アンダーライン
肢ウ 掲載なし
肢エ 303頁・2 Aランク アンダーライン
肢オ 218頁・③ Aランク アンダーライン

第16問 論文知識重視の問題
肢ア 202頁(5) Aランク アンダーライン
肢イ 191頁(8)ア Aランク マーク
肢ウ 198頁(2) Aランク マーク
肢エ 202頁・6(1) Aランク マーク
肢オ 204頁(4) Aランク マーク

第17問 短答知識重視の問題
肢ア 80頁・3 Aランク
   276頁・イ Bランク マーク
肢イ 277頁 Bランク マーク
肢ウ 277頁 Bランク アンダーライン
肢エ 278頁(5) Bランク マーク
肢オ 278~279頁 Bランク アンダーライン

第18問 短答知識重視の問題
肢ア 423頁[論点6] Bランク
肢イ 掲載なし
肢ウ 242頁(3) Aランク マーク
肢エ 408頁・13 Cランク
肢オ 206頁(2) Bランク マーク

第19問 短答知識重視の問題
肢ア 227頁(イ) Cランク
肢イ 228頁(3) Cランク アンダーライン
肢ウ 掲載なし
肢エ 229頁(5) Cランク
肢オ 掲載なし

第20問 短答知識重視の問題
肢ア 163頁[論点2] Bランク
肢イ 掲載なし
肢ウ 400頁[論点8] Cランク
肢エ 166頁(ⅱ) Aランク アンダーライン
肢オ 163頁[論点2] Bランク

第21問 短答知識重視の問題
肢ア 154頁・5
肢イ 154頁・5
肢ウ 173頁(2)ア
肢エ 172頁・4(1)
肢オ 172頁・4(1)

第22問 短答知識重視の問題
肢ア 295頁・イ(ア) Bランク
肢イ 296頁(イ)Bランク アンダーライン
肢ウ 296頁・ウ Bランク
肢エ 296頁・ウ Bランク
肢オ 295頁・イ(ア) Bランク

第23問 短答知識重視の問題
肢ア 掲載なし
肢イ 210頁(3)Cランク
肢ウ 269頁・4 Bランク
肢エ 305頁・3(1) Cランク アンダーライン
肢オ 306頁(2) Cランク アンダーライン

第24問 論文知識重視の問題
肢ア 331頁(2)Aランク マーク
肢イ 170頁・3 Aランク
肢ウ 339頁(2)Aランク マーク
   335頁・イ Aランク マーク
肢エ 331頁(2)Aランク マーク
肢オ 341頁・イ Aランク アンダーライン

第25問 論文知識重視の問題
肢ア 373頁・イ(ウ) Aランク
肢イ 360頁・イ Aランク アンダーライン
肢ウ 361頁(2)ア(イ) Aランク アンダーライン
肢エ 378頁(3) Aランク
肢オ 掲載なし

第26問 短答知識重視の問題
肢ア 403頁・10 Cランク アンダーライン
肢イ 404頁・15 Cランク
肢ウ 402頁・8 Cランク
   289頁[論点4] Cランク
肢エ 掲載なし
肢オ 404頁・14 Cランク

第27問 短答知識重視の問題
肢ア 410頁・5(1)イ Cランク
肢イ 410頁・4(2) Cランク
肢ウ 412頁・7(1) Cランク
肢エ 412頁・6 Cランク
肢オ 411頁・5(1) Cランク

第28問 短答知識重視の問題
肢ア 掲載なし
肢イ 425頁[論点9] Bランク
肢ウ~オ 掲載なし

第29問 論文知識重視の問題
肢ア 235頁・ウ Bランク マーク
肢イ 憲法274頁・イ Bランク マーク
肢ウ 431頁[論点1] Cランク
肢エ 434頁[論点1] Bランク
肢オ 436頁・2(1) Aランク マーク

第30問 短答知識重視の問題
肢ア 457頁・1(1)イ(ア) Cランク
肢イ 457頁・1(1)イ(ア) Cランク
肢ウ~オ 掲載なし

第31問 論文知識重視の問題
肢ア 460頁[論点1] Bランク
肢イ 460頁[論点1](判例2) Bランク
肢ウ 460頁[論点1](判例1) Bランク
肢エ 460頁[論点1] Bランク
肢オ 掲載なし

第32問 短答知識重視の問題
肢ア~オ 掲載なし

第33問 短答知識重視の問題
肢ア 477頁・1 Bランク アンダーライン
肢イ 471頁・ウ
肢ウ 484頁・1(2)ア Bランク
肢エ 487頁[論点1] Bランク(参照)
肢オ 486頁・5(3) Bランク

第34問 短答知識重視の問題
肢ア 掲載なし
肢イ 479頁・6(1) Bランク
肢ウ 480頁・6(3) Bランク アンダーライン
肢エ 481頁(5) Bランク アンダーライン
肢オ 481頁・6(7) Bランク アンダーライン

第35問 短答知識問題
肢ア 470頁(2)イ
肢イ 470頁(2)イ アンダーライン
肢ウ 471頁(2)イ
肢エ 掲載なし
肢オ 502頁・ウ(ア)(ⅱ) Aランク マーク

第36問 論文知識重視の問題
肢ア 269頁・4(1)Bランク
肢イ 80頁・3(1)
肢ウ 71頁[論点6] Bランク
肢エ 掲載なし
肢オ 503頁・6(1)ア マーク

第37問 短答知識重視の問題
肢ア 155頁・6(3)
肢イ 掲載なし
肢ウ 465頁・3 Aランク
肢エ 486頁・4 Bランク
肢オ 478頁・4(3)ア Bランク
   477頁 Bランク マーク(参照)

 

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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