民事系論文、本当にお疲れ様でした。
これで、司法試験の約3分の2を終えたことになります。
残すは、刑事系論文と短答3科目です。
民事系は、選択科目や公法系に比べて解答筋が不明瞭であることが多いので、初日以上に、自分の出来不出来が気になるかもしれません。
しかし、ここで過去を振り返ってはいけません。Twitterや5ちゃんねるに振り回られてもいけません。過去を振り返ることのないよう、自分をしっかりと律する必要があります。
こうしたことが、今、皆さんに問われています。
今回の記事では、出題内容に左右されることなく安定して合格答案を書くための【科目単位のコツ】のうち、刑事系に関するものを紹介いたします。
刑 法
①設問ごとの出題の内容・形式を確認する
設問ごとの出題の内容と形式に注意しましょう。
【事案】を読む前に、【設問】を読み、何がどういった形式で問われているのかを把握した上で、【事案】を読んだ方が、【事案】を正確に処理することができると思います。
②理論体系に従う
構成と答案作成のいずれの段階でも、客観的構成要件(主体、客体、行為、結果、因果関係)→主観的構成要件(故意、主観的違法要素)→違法性→有責性→刑罰権の発生(客観的処罰条件、一身処罰阻却事由)→刑の免除・減軽(心神耗弱、中止犯、過剰防衛など)という理論体系を意識しましょう。
③三者間形式における2つの構成
三者間形式の問題では、(1)小問及び自説で項目分けをする構成と、(2)自説を展開する途中で小問にも言及する構成とを上手く使い分けましょう。
基本的に、小問における対立が罪名の違いをもたらす場合には(1)の構成を、小問における対立が同一罪名内におけるものにとどまる場合には(2)の構成を選択することになります。
(例1)
乙は、甲による窃盗の後、甲との現場共謀に基づき、事後強盗目的で、窃盗被害者Vに対して脅迫を行った。
乙の罪責について、①乙には事後強盗罪の共同正犯が成立するとの立場からの説明と、②乙には脅迫罪の限度で共同正犯が成立するとの立場からの説明の双方に言及した上で、自らの見解を論じなさい(令和1年司法試験設問2参考)。
➡小問の対立が罪名の違いをもたらすから、構成(1)を用いる。
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(構成1)
1. 小問①
2. 小問②
3. 自説
(例2)甲は、Vに対して500万円の貸金債権を有していたところ、Vに対して「今日中に600万円を支払わないと、家族が交通事故に遭うかもしれない。」と申し向け、畏怖したVから600万円の交付を受けた。
甲の罪責について、①甲に成立する財産犯の被害額が600万円になるとの立場からの説明と、②甲に成立する財産犯の被害額は100万円にとどまるとの立場から説明の双方に言及した上で、自らの見解を論じなさい(令和2年司法試験設問1参考)。
➡小問の対立が同一罪名(恐喝罪)内におけるものにとどまるから、構成(2)を用いる。
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(構成2)
1. 「恐喝」
2. 「財物を交付させた」
3. 財産的損害
(1)小問①
(2)小問②
(3)自説
4. 故意、不法領得の意思
5. 違法性阻却事由
6. 結論
④共犯、間接正犯の事例における構成
共犯事案では、実行担当者とそうでない者とを分けた上で実行担当者から書きます。
実行共同正犯の事案では、共犯者間で共通する事情が多いなら複数人をまとめて書き、事情が異なる要件の段階で分けて書きます。
間接正犯の事案では、原則として背後者から書きます。
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刑事訴訟法
①事実の摘示・評価の仕方
当てはめでは、事実の摘示・評価を区別しましょう。
その上で、個々の事実ごとの評価だけでなく、個々の事実の集積により導かれる事実群に対する評価まで書くことができれば理想的です。
②重要事実に対するイメージとその文章化
当てはめでは、重要事実に対する評価をイメージし、稚拙な表現や分かりにくい表現になっても構いませんから、そのイメージを具体的に文章化して答案に反映しましょう。
③限界事例では結論自体ではなく結論を導く過程が重要
限界事例における当てはめでは、結論はどちらでも構いません。
採点では、結論自体ではなく、結論を導く過程が重視されますから、「確かに、… しかし、…」といった構成により、「確かに、…」のところで自分の結論を導く上で不利な事実の摘示・評価をした上で、「しかし、…」のところで自分の結論を導く上で有利な事実の摘示・評価に入ります。
④結論の妥当性よりも、規範自体の正確性と規範適用の正確性を重視する
結論の妥当性は重視しなくてもいいです。
刑事訴訟法の論文試験で最も重視されていることは、捜査機関側から見た結論の妥当性ではなく、規範自体の正確性と規範適用の正確性(さらには説得力)です。
したがって、違法寄りの捜査を強引に適法にするために、規範自体を歪めたり、規範適用を歪めたりするべきではありません。
⑤捜査の必要性の論じ方
捜査の必要性を論じる場合、当該捜査の具体的な目的から出発して、その目的を達成する手段として当該捜査が必要であるか(役に立つか、より穏当な方法によって捜査目的を達成することの可否)について具体的に論じましょう。
⑥推認過程の説明が重視されている
刑事訴訟法では、推認過程を説明する場面が多いです。これが最も重視されているのが伝聞・非伝聞の区別においてですが、それ以外でも重視されています。
おかしな推認過程になってしまっても構いませんし、稚拙な表現や分かりにくい表現になっても構いませんから、推認過程をイメージし、それを文章として具体的に答案に反映することにより、自分がイメージした推認過程を採点者に伝えましょう。
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