論文式の商法では、予備試験において司法試験過去問から出題されることもありますが、それ以上に、司法試験において予備試験過去問から出題される頻度が高いです。
例えば、以下の分野・論点は、予備試験過去問で出題された後に司法試験で出題されています。
✓特別利害関係取締役に対する招集通知漏れ(H23予備、H28司法)
✓定款による譲渡制限株式の譲渡におけるみなし承認→名義書換えの不当拒絶(H23予備、H25司法)
✓会計帳簿閲覧請求(H25予備、H30司法)
✓事業譲受会社による名称続用(H27予備、R4司法)
✓株主提案権(H30予備、R1司法)
予備試験商法では、司法試験に比べて、最新の判例・法改正を早く出題する傾向が強いです。
例えば、平成28年予備試験商法では、準共有株式の権利行使について会社の同意(106条但書)がある場合における民法上の共有規定の適用の有無(最判H27.2.19・百11)、平成26年改正法(組織再編全般を対象とした差止請求権の法定)を前提とした吸収合併の効力発生前後における争い方が出題され、平成29年予備試験商法では、平成26年改正法を前提とした募集株式の発行に当たって払込みが仮装された場合における取締役の責任、株式発行の効力、株式譲受人の権利行使が出題されています。
こうした傾向を踏まえ、予備試験過去問の出題内容のうち令和5年以降の司法試験で出題される可能性のある分野・論点は、次の①ないし⑭であると考えます。特に出題可能性が高いのは、③、⑤、⑥、⑦、⑧、⑫です。
①株式の二重譲渡(H23予備)
②定款による譲渡制限株式の譲渡の手続(H23予備、R2予備 ※H25司法でも出題)
③特別利害関係取締役が議決に参加した場合における取締役会決議の効力(H26予備、R1予備)→同決議に基づく取引行為の効力(H26予備)
④間接損害株主による対第三者責任(429Ⅰ)の追及(H27予備)
⑤準共有株式に係る権利行使(H28予備)
⑥平成26年改正法を前提とした組織再編の効力発生前後における救済手段(H28予備)
⑦債務の株式化(デッド・エクィティ・スワップ)(H29予備)
⑧平成26年改正法を前提とした募集株式の発行に当たって払込みが仮装された場合における取締役の責任、株式発行の効力、株式譲受人の権利行使(H29予備 ※旧法下ではH22司法でも出題)
⑨多重代表訴訟(R2予備)
⑩親会社取締役の子会社の業務に対する監視監督義務(R2予備)
⑪重要な子会社の株式の譲渡に関する手続(R2予備)
⑫自己株式取得(R2予備:手続 ※H23司法では手続・効力・責任が出題)
⑬取締役の退職慰労金(R3予備)
⑭利益供与に関する責任(R4予備 ※H30司法でも出題)
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