加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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令和3年司法試験商法設問1における代表権濫用の位置づけ

いつもお世話になっております。今年度の司法試験の商法の解説を見させていただきました。
まず、設問1につきまして、Aは会社を代表しておきながら自己が利益を受ける意思を有していたことに着目し、民法107条の問題が生じるのではないかと思ったのですが、どうでしょうか。
次に、CがAとGの異議に取り合わなかったという事情から、裁量権の不当行使があったとして315条に違反すると考えたのですがこの点はどうでしょうか。
お忙しい中申し訳ありませんが、ご回答いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

設問1 代表権濫用

設問1では、代表権濫用(民法107条)も問題になります。Aが、甲社を代表して、A個人のレストラン事業の資金としての借り入れに係る貸金債務を主債務とする連帯保証契契約を締結しているからです。

代表権濫用というためには、その前提として、本件連帯保証契約がAの代表権の「範囲内の行為」であるといえる必要がありますから、「多額の借財」や間接取引に関する規制をクリアしていないのであれば、理論上は、代表権濫用の論点は顕在化しません。

もっとも、設問1は、甲社の主張を出発点としてその当否を論じるという形で、乙社の請求の可否を検討させる形式の問題ですから、初めに甲社に①「多額の借財」に関する規制違反、②間接取引に関する規制違反及び③代表権濫用を主張させ、①②を認めた後で「仮に①②が認められないとしても、…」と仮定した上で③代表権濫用の論述に入ることになります。

平成26年司法試験でも、似たような事案で、「多額の借財」に関する規制違反→代表権濫用という流れ論じることが求められています。

代表権濫用については、解説及び参考答案に反映させて頂きますね。

設問3 CがAとGの異論に取り合わなかったこと

問題文116~118行目における「議長となったCは、「Gには出席資格がない。」と述べるとともに、「Fには丙社代表者としての出席を認めます。」と述べた。これらに対し、AとGが異論を唱えたが、Cが取り合わなかったため、Gは、仕方なく退場した。」という記述について、「これらに対し、AとGが異論を唱えたが、Cが取り合わなかった」という部分に着目して、㋐CがGによる議決権代理行使を認めなかったこと(解説中の②)、㋑Cが丙社の内規に違反するFによる投票を認めたこと(解説中の③)との関係で、どのように論じるべきかは悩ましいです。

㋐との関係についてですが、㋐と別に、議長の権限(315条1項)の濫用として論じる実益は乏しいと思います。考えられる構成は2つであり、1つ目は、㋐について議長の権限の濫用と絡めて論じる、2つ目は、㋐について議長の権限の濫用と絡めずに論じるというものです。1つ目の構成でも、代理人資格を株主に限定する定款規定がGに適用されるかどうかが議長の権限の濫用に直結しますし、代理人資格を株主に限定する定款規定がGに適用されるのであれば議長の権限の濫用を解することなく「決議の方法」の310条1項違反という取消事由が導かれることになりますから、1つ目の構成を選択する実益は乏しいと思います。

㋑との関係についてですが、結局、Aによる投票とFによる投票のどちらを優先するべきかが議長の権限の濫用の有無に直結することになると思われるため(私の答案では、㋑については議長の権限の濫用に絡めて論じています)、㋑とは別に、「AとGが異論を唱えたが、Cが取り合わなかった」だけに着目して議長の権限の濫用を論じる実益は乏しいと考えています。

2021年05月25日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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