加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

実況見分調書中の「再現通りの犯罪事実」を要証事実とする部分と「犯行目撃可能性」を要証事実とする部分の関係

お世話になっております。刑事訴訟法の伝聞証拠に関しまして質問させて頂ければと思います。
平成25年司法試験刑事訴訟法設問2で、実況見分調書の証拠能力が問題とされ、Wの供述部分のうち「犯行状況」を立証事項とする別紙1は伝聞証拠、「Wの犯行目撃可能性」を立証事項とする別紙2は非伝聞証拠とする出題がされています。
これはつまり、別紙2は別紙1という証拠に対してその信用性を増強するという意味での補助証拠ということで良いでしょうか。直接の立証事項たる「Wの犯行目撃可能性」は別紙1のW供述との関係での補助事実に当たると理解していますが、正しいでしょうか。
そして、それを前提とすると、別紙1について証拠能力がないという認定を答案上してしまうと、その後の別紙2について、かかる補助事実を立証することが無意味化してしまわないかが気になりました。補助証拠の前提としての対象となる証拠が手続きから排除されて存在しないのではないかという疑問です。
これは、証拠能力について論じろという設問との関係では気にしなくて良いことなのでしょうか。
お教え頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。

【別紙1】の直接の立証事項たる要証事実は、「調書記載の再現通りの犯罪事実」です。したがって、【別紙1】は直接証拠です。他方で、【別紙2】は、実質証拠ではなく、直接証拠である【別紙1】の信用性を基礎づける補助事実を証明するための補助証拠です。

そうすると、【別紙1】が証拠能力を欠く場合、【別紙1】から独立した証拠価値を持たない【別紙2】の証拠能力を論じる実益はないです。もっとも、司法試験ではそのように考えるべきではなく、【別紙1】の証拠能力の有無にかかわらず、【別紙2】の証拠能力についても検討しましょう。因みに、【別紙1】の証拠能力の肯否と【別紙2】の証拠能力の肯否は別次元のことですから、【別紙1】の証拠能力が否定される一方で、【別紙2】の証拠能力を肯定することは何ら問題ありません(ただ、【別紙1】の証拠能力が否定されている以上、【別紙1】の証明力というステージには進まないため、【別紙2】を証拠として使うところまで進まない、というだけです。)。

2021年05月03日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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