加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

平成21年司法試験「民法」設問3 189条1項・190条と703条・704条の関係

いつもお世話になっております。秒速・過去問攻略講座2021民法を受講していて疑問に思ったことがありますので質問させていただきました。
加藤先生は平成21年民法設問3について、模範答案の中で、703条の検討をした後に189条・190条が703条の特則であることを論じ、189条・190条について検討していますが、189条・190条が703条の特則であるならば703条の具体的検討はせずに(例えば最初に703条の検討は排除されることを端的に明示して)189条・190条の検討からしていけば良いのではないかと考えたのですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
また、仮にこの構成をとってしまうと即時取得や所有権留保特約の法的構成に触れることができなくなってしまいますが、この点はどのように解決すればよいのでしょうか。
お忙しい中申し訳ありませんが、ご回答いただけますと幸いです。よろしくお願い致します。

ご指摘の通り、動産の使用利益について189条1項・190条を類推適用する判例の立場からは、使用利益の返還の要否・範囲に関する結論を導く上で、703条・704条に従った検討をすることは不要です。それにもかかわらず、私の答案で189条1項・190条の検討に先立ち、703条・704条を適用した場合における使用利益の返還・要否についても言及しているのは、いきなり189条1項・190条から書くと1頁くらいしか書けないからです。

もっとも、上記の通り、使用利益の返還の要否・範囲に関する結論を導く上で703条・704条に従った検討をすることは不要ですし、189条1項・190条でも所有権留保特約の性質を論じることができるため、いきなり189条1項・190条から書いても問題ありません。

後者について補足しますと、所有権留保特約は代金完済を所有権移転の停止条件とする特約であるため、Aが代金を完済していない間は、原則として、動産甲の所有権はXに帰属したままとなります。そのため、Yは、XA間の売買契約における所有権留保特約の存在及びAの代金未完済による所有権留保について悪意又は有過失である場合には、自分に本権があると信じていなかったとして「悪意」の占有者に当たり、「悪意」になった時点以降の動産甲の使用利益の返還義務を負うことになります。このように、189条1項・190条でも、所有権留保特約の性質を論じることができます。

2021年02月26日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ