加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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財産権規制に関する違憲審査の枠組み

憲法の財産権規制について質問です。証券取引法事件以降、既得の具体的財産権の制限の類型でも証券取引法事件が引用されているから、証券取引法事件の判断枠組みで統一されたと説明を受けましたが、既得の財産権の制限類型で、国有農地売払特措法事件を引用する判例も登場しています(最判平成23.9.22、最判平成23.9.30)。この場合にも、証券取引法判決に一本化されたとして、射程を考えずに証券取引法事件の判断枠組みで書いてもいいのでしょうか。

元々は、財産権規制のうち既得の具体的財産権を制限する法令の合憲性については国有地売払特措法事件判決の枠組みにより判断し、財産権の内容を形成する法令の合憲性については証券取引法事件判決の枠組みにより判断すると理解されていました。

もっとも、平成29年予備試験憲法の出題趣旨において、既得の具体的財産権を制限する条例の合憲性が問題となった事案について、「本件条例が、憲法第29条第1項で保障される財産権を侵害する違憲なものであるかを論じる必要がある。その際、本件条例の趣旨・目的と、それを達成するための手段の双方について、森林法違憲判決…及び証券取引法判決…などを参照しながら 、検討する必要がある。」と言及されたことにより、司法試験委員会側としては既得の具体的財産権を制限する法令の合憲性についても証券取引法事件判決の枠組みにより判断する立場に立っていることが明らかとなりました。

したがって、現在では、既得の具体的財産権を制限する法令の合憲性についても、証券取引法事件判決の枠組みにより判断することになります。

2021年02月03日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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