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譲渡担保権設定者が譲渡担保権者からの譲受人に対して清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を対抗できる理由

平素は大変お世話になっております。
留置権の「その物に関して生じた債権」について質問がございます。
留置権の成立要件である「その物に関して生じた債権」(牽連関係)との関係で、被担保債権成立の時点において被担保債権の債務者と目的物の引渡請求権者とが同一人であることが必要であると解されています。
ですが、最判平成9年4月11日(譲渡担保の事例)は、譲渡担保権設定者は譲渡担保権者からの譲受人による物権的返還請求権の行使に対して、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができると判示しています。
被担保債権である清算金支払請求権の債務者は「譲渡担保権者」であるのに対して、目的引渡請求権の債権者は「譲受人」ですので、「その物に生じた債権」にはあたらないのでは?と疑問に思いました。
宜しくお願い致します。

例えば、Aを買主・Bを売主とする売買契約の締結後、Aから売買目的物を譲り受けたCがBに対して売買目的物について物権的返還請求権を行使した場合(請求原因事実は、Bもと所有、AB売買、AC間売買、B現在占有)には、AB間の売買契約の成立時点においてBのAに対する売買代金債権を被担保債権とする留置権が成立し(被担保債権である売買代金債権の成立時点において、売買代金債権の債務者と売買目的物の引渡請求権者はいずれもAであり、牽連関係も満たす)、Bは、その後に売買目的物を譲り受けたCに対して、物権の絶対性(物権である留置権は、その成立後に当該物を譲り受けた第三者に対しても対抗できる)を根拠として留置権を対抗することができます(例えば、道垣内「担保物権法」第3版31頁参照)。

おそらく、最判平成9年4月11日の事案については、①弁済期の経過により譲渡担保権者は換価処分権の取得に伴い目的物引渡請求権も取得するため(私見)、被担保債権である清算金支払請求権の成立時点において清算金支払請求権の債務者と目的物引渡請求権の債権者とはいずれも譲渡担保権者であるといえるから、この時点で留置権が成立し、②譲渡担保権設定者は、譲渡担保権者から換価処分として目的物を譲り受けた第三者に対しては、留置権の絶対性を根拠として、①で成立した留置権を対抗することができる、と理解することになるのだと思います。

2021年01月31日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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