加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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緊急処分説に立つ場合、証拠隠滅の現実的可能性を欠く事案では、無令状捜索差押えは認められないのか

いつもお世話になっております。
逮捕に伴う無令状捜索・差押えについての質問です。
「逮捕する場合」(220条1項)の解釈について、緊急処分説の立場に立つ場合、「原則として、逮捕着手が先行し、かつ、逮捕と時間的に接着していることが必要である」(総まくり2021テキスト76頁)と説明されるのが一般的だと思います。
そうすると、上記の要件充足が認められる場合には、被疑者が身柄拘束されて証拠隠滅の可能性が認められないときであっても、「逮捕する場合」の要件を充足するのでしょうか。
緊急処分説の根拠である、被逮捕者による証拠隠滅を防止して証拠を保全する必要性という点に鑑みると、上記の場合には「逮捕する場合」には当たらないと考えるのが合理的なのではないか思います。
仮に、このように考える場合、上記規範を維持した上で、当てはめの中で上記理解を示すべきでしょうか(例えば、本件では逮捕行為が先行し、かつ、逮捕との時間的接着性も認められる。しかし、証拠隠滅の危険性が認められないため、「逮捕する場合」にはあたらない)。あるいは、規範を修正した上であてはめを行うべきでしょうか。
長文での質問になりますが、ご回答いただけると幸いです。

緊急処分説に立つ場合、「逮捕する場合」と「逮捕の現場」のいずれについても、無令状捜索差押えの実質的根拠である①「証拠存在の蓋然性の一般的な高さ」と②「証拠保全の緊急の必要性」が妥当する範囲に限定して解釈することになりますが、あくまでも、「一般的に①・②が認められるのか」という観点から文言を解釈するにととどまります。したがって、「逮捕する場合」と「逮捕の現場」のいずれについても、当該事案において実際に①や②が認められるかということは度外視して解釈及び当てはめをすることになります。

当該事案において実際に①が認められない場合には、捜索の物的範囲が否定されることになります(合理説からも、相当説からも、無令状捜索の物的範囲については、「捜索対象は、逮捕被疑事実に関連する証拠物が存在する蓋然性の認められるもの」に限定されます)。当該事案において実際に②が認められない場合には、緊急処分説からは、捜索・差押えの「必要があるとき」(220条1項柱書前段)を欠くことになると思われます。

2021年01月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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