加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

制限時間を設けないで司法試験過去問の完全解答案を作成することに意味はあるのか

お世話になっております。
司法試験過去問についての質問です。
来年度からロースクール(既習)に入学します。
ロー入試にあたり、旧司法試験過去問等の短文事例演習を繰り返しておりました。
これから、司法試験(予備試験)の過去問に挑戦して、今現在の自分の学力の確認や勉強の指針を立てようとしております。
教材として、辰已法律研究所の「ぶんせき本(10人本)」や「ガール本(大島義則著)」等を想定しておりました。
自分が解答した内容を解説を参照しながら論点落としや論述の程度を確認する予定です。
答案作成の方法について、解説等を参照しながら制限時間を設けることなく完全答案を作成する,という勉強法を見かけました。
この方法については、①時間をある程度かけて作成することに意味はあるのか、②意味はあるとしてどのようなことを意識するべきなのかを教えていただけますでしょうか。
宜しくお願いいたします。

いきなり解説等を参照しながら完全解答案を目指すという勉強法は、絶対にやってはいけません。司法試験の難しさの1例として、複雑な事実関係を短時間で整理・把握して配点項目(訴訟物、罪名、条文、論点等)を抽出することが挙げられます。これまでの予備校答案、短文事例問題及び法科大学院入試の問題では簡単に抽出することができていたAランクの訴訟物・罪名・条文・論点であっても、司法試験レベルの問題になると抽出できなくなる、ということがあります。いきなり解説等を参照しながら完全解答案を書こうとすると、肝心の「抽出の難しさ」を実感することができず、司法試験レベルの問題で「抽出するために必要とされる理解度及び問題文の読み方のコツ」を身につける必要性に気が付くことができません。

また、制限時間内に書くべきことを書き切ることの難しさも挙げられます。これも、2時間で答案を書こうとしてみて初めて実感できることです。制限時間内に書くべきことを書き切ることの難しさを実感するからこそ、メリハリ付けの視点を培うことの必要性、簡潔にまとめる文章の書き方の重要性、普段から論証を短く加工しておく必要性に気がつけます。

なので、まずは2時間で答案を書こうとしてみましょう。問題を解いている途中で2時間ではどうしても無理だと感じた場合には、3時間くらいまでなら延長しても構いませんが、それ以上延長するのはやめたほうが良いと思います。時間にルーズになってしまい、いつまで経っても2時間で書き切る実力が身に付かなくなる危険があります。

2~3時間で六法と問題文だけを参照して問題を解いてみた後は、出題趣旨・採点時間、辰已法律研究所の「ぶんせき本(10人本)」、「ガール本(大島義則著)」等を使って解答筋も含めて問題の分析を行い、その後、制限時間を設けないで自力で完全解答案を作成してみましょう。私の司法試験過去問攻略講座の模範答案には劣る出来になると思いますが、それでも構いません。私が受験生時代に自力で作成した完全解答案だって、私の司法試験過去問攻略講座の模範答案に比べてだいぶ劣るものでしたが、論文36位で合格できるだけの価値はありました。自力で完全解答案を作成する過程は大きな意味があるからです。自力で完全解答案を作成する過程で、同じことについて何度も何度も真剣になって深く考えますし、様々な文献を参照することにもなりますから、過去問で問われていることの理解度が高まります。しかも、自分で作成しているため、完全解答案が出来上がった段階で既に完全解答案の中身が自分の頭の中にある程度定着しています。司法試験まで2年半以上あり、自力で完全解答案を作成するための時間も十分にありますから、非常にお薦めです。

2020年12月13日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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