加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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処分無効確認訴訟の補充性の当てはめ

秒速・総まくり2020受講生です。
無効確認訴訟の補充性について、当てはめでは、争点訴訟や公法上の当事者訴訟との判決効の生じ方の違いに着目して比較する、との説明がありました。
平成18年司法試験設問1では、38条1項・33条により判決の拘束力が認められる無効確認訴訟の方がより直截的で適切と説明されていました。
ですが、公法上の当事者訴訟は41条1項で33条1項を準用しているので、公法上の当事者訴訟にも判決の拘束力は認められるので、この当てはめでは不適切かなと思います。
補充性の当てはめについては、基本書も詳しくは書いておらず、論文過去問の解説書もあっさりとした記述で、よくわかりません。
ご回答よろしくお願いします。

処分無効確認訴訟の補充性の当てはめでは、処分の無効を前提とする争点訴訟・当事者訴訟と処分無効確認訴訟とを、判決効の違いに着目して判断することになります。令和1年司法試験設問1でも、比較の視点として「拘束力の有無、第三者項効の有無」が挙げられています。

争点訴訟は民事訴訟であるため、処分無効確認訴訟と異なり、判決の拘束力(行政事件訴訟法38条1項・33条)が認められません(45条が33条を準用していないため)。また、訴訟物の違いから既判力の客観的範囲(処分無効確認訴訟については7条による民事訴訟法114条1項の適用ないし準用)が異なることにもなります。なお、両者は、判決の第三者効が認められないという点では共通します。32条1項が準用されていないため、いずれも判決相対効の原則に服することになります(処分無効確認訴訟については7条による民事訴訟法115条1項1号の適用ないし準用)。

当事者訴訟と処分無効確認訴訟とは、判決の拘束力が認められる点(当事者訴訟については41条1項による33条1項の準用)、判決の第三者効が認められない点で共通します。もっとも、訴訟物の違いから既判力(7条による民事訴訟法114条1項の適用ないし準用)の客観的範囲が異なりますし、事案によっては審理対象の違いから拘束力(判決理由中の判断にも生じる)の生じ方が異なることもあります。

平成18年司法試験設問1における二項道路一括指定処分の無効確認訴訟の補充性についてですが、まず、「本件通路が2項道路に該当しないことを・・訴訟によって確定させる」というAの目的を達成する手段として、所有権確認訴訟や境界確定訴訟といった民事訴訟(争点訴訟)は役に立ちません。したがって、争点訴訟との比較により補充性が否定されることにはなりません。

次に、当事者訴訟との比較ですが、これには2つの説明の仕方があります。1つ目は、セットバック義務不存在確認訴訟は当事者訴訟ではなく無名抗告訴訟であるから、そもそも比較対象にならないとする考えです。二項道路一括指定処分の無効確認訴訟の補充性を肯定した最高裁平成14年判決(最判H14.1.17・百Ⅱ154)の調査官解説は、セットバッグ義務不存在確認訴訟を公権力の行使に関する不服の実体を有する無名抗告訴訟であると理解しています(大島「行政法ガールⅠ」初版45頁、2006.8「受験新報」59頁[野呂充]、2006「法学セミナー」43頁[曽和俊文]、「行政判例百選」第7版154解説[洞澤秀雄])。

2つ目は、セットバック義務不存在確認訴訟が訴訟において無名抗告訴訟と当事者訴訟のいずれで捉えられるのかは定かではないから、仮に当事者訴訟として捉える余地があったとしても、処分無効確認訴訟の補充性の当てはめでは、セットバック義務不存在確認訴訟が無名抗告訴訟であると判断される可能性にも備えて同訴訟により目的達成が可能であることをもって補充性を否定するべきではないとする構成です。セットバック義務不存在確認訴訟を無名抗告訴訟であると捉えることについては批判があり(2006.8「受験新報」59~60頁[野呂充]、「行政判例百選」第7版154解説[洞澤秀雄])、中原「基本行政法」第3版383頁ではセットバック義務不存在確認訴訟は当事者訴訟であるとされているからです。

平成18年司法試験設問1における二項道路一括指定処分無効確認訴訟の補充性の当てはめは、お詫びの上、上記の通り修正させて頂きます。

2020年11月27日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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