加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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「口頭弁論終結後の承継人」の事案では「既判力の作用」の有無についてどのように認定するべきか

こんにちは。民事訴訟法115条1項3号「口頭弁論終結後の承継人」について質問があります。
最判昭和48年6月21日のような、前訴訴訟物が「土地所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記手続請求権」、後訴訴訟物が「口頭弁論終結後の土地譲受人に対する所有権移転登記手続請求権」であるという事案では、既判力の主観的範囲以前の問題として、前訴確定判決の既判力が後訴に作用しないのではないかという疑問があります。
答案の構成としては、「前訴確定判決の既判力が後訴に作用する」ことを言わなければ、115条1項3号の解釈論に入れないように思えるのですが、ここをどうすればよいか分からず悩んでおります。①作用の話は意識的にスルーし、「口頭弁論終結後の承継人」の解釈論から入ればよい(固有の抗弁ある者ならばいずれの説にせよ、抗弁を主張できるという結論が出てそれで締められる)、②何とか、前訴・後訴の訴訟物は先決関係にあると認定する、といった方針が浮かんでいますが、どうするのが適切でしょうか。
固有の抗弁ある者と「口頭弁論終結後の承継人」についての実質説は、既判力作用がない場合でも「口頭弁論終結後の承継人」には、前主が相手方との間で既判力ある判断を争うために主張することが遮断されるような事項については、前主と同じく主張することができなくなるという前提に立っているという話を聞いたことがあります。そうすると、③実質説に立てば、前訴既判力の作用を否定した上で、「口頭弁論終結後の承継人」にあたるならば、抗弁が提出できなくなるから、これを検討する〜という組み立てが可能になるのでしょうか。
お教え頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

私の見解は以下の通りです。

まず、①前訴:原告A・被告B、後訴:原告A・被告C(敗訴したBからの承継人)という事案では、BとCとを同一視した上で、前訴訴訟物と後訴訴訟物とを比較することにより、両者間に同一・先決・矛盾の関係があるかどうかを判断します。BとCとを同一視しないと、訴訟物間の同一・先決・矛盾の関係を肯定することができない事案も多々あるからです。

次に、②上記の判断手法を用いても訴訟物間の同一・先決・矛盾の関係を肯定することができない事案では、「訴訟物間の同一・先決・矛盾の関係の有無により既判力の作用を判断する」という判断枠組みを放棄することになります。基本書等では、既判力の主観的範囲の拡張の事案では、既判力の作用について明示的に言及することなく、既判力の作用が認められることを前提とした説明がなされています。おそらく、訴訟物どうしが既判力が作用する関係にあるのかについては、「訴訟物たる権利又は義務自体の主体となった者、及び、訴訟物たる権利関係又はこれを先決関係とする権利関係について当事者適格を取得した者」という「承継人」の定義として織り込み済みである、と考えられているのだと思います。したがって、②の事案では、「承継人」に当たることを認定した後に、「承継人」に該当することを肯定した理由を流用する形で「前述した前訴と後訴の関係から、前訴の既判力が後訴に作用するといえる」と書けばいいかと思います。

参考にして頂ければと思います。

2020年11月16日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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