加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

労働者のストライキを理由とする賃金カットと使用者によるロックアウトの違い

労働者のストライキを理由とする賃金カットと使用者によるロックアウトについて、どのような視点で区別すればいいのでしょうか。前者が問われた平成21年司法試験第2問・平成28年司法試験第2問と後者が問われた平成25年司法試験第2問を比較しても、よくわかりませんでした。

確かに、労働者のストライキを理由とする賃金カットが問われた平成21年司法試験第2問・平成28年司法試験第2問のうち、平成28年司法試験第2問では、Y社がストライキを実施するX組合の組合員を含む、ストライキが実施される営業所の整備職の従業員に対し、ストライキの間、休業することを命じているため、Y社がX組合によるストライキの終了後にホテル建物を閉鎖して営業を休止し、X組合の組合員であるX1らの就労を拒否し、その日以降の賃金の支払いを拒んだという平成25年司法試験第2問と似ています。

しかし、争議行為とは、労働組合・使用者のいずれを主体とするものであっても、「主として団体交渉における自己の主張の貫徹ために、現存する一般市民法による法的拘束を離れた立場において、就労の拒否等の手段によって相手方に圧力を加える行為」(丸島水門事件・最三小判昭和50・4・25・百98)であるといわれています。

平成25年司法試験第2問におけるホテル建物の閉鎖による営業の休止は、X組合によるストライキの終了後に行われたものであることからしても、X組合に対して経済的圧力を加えるために行われた就労拒否であるといえます。

これに対し、平成28年司法試験第2問では、X組合のストライキによって車両バスの点検・整備をする必要がなくなったことから、一時的に不要となる「整備職」業務について休業を命じているにすぎません。一時的に不要となる「整備職」業務について無駄な賃金を発生させないために行われた休業命令であって、X組合に対して経済的圧力を加えるために行われているわけではありませんから、使用者側の争議行為には当たらないわけです。

2020年09月16日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ