加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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配転命令拒否を理由とする解雇と変更解約告知の違い

使用者が配転命令に従わなかった労働者を解雇した場合、これは変更解約告知に当たらないのでしょうか。配転命令は直接的に勤務地や職種という労働条件を変更するものなので、これに従わないことを理由とする解雇はまさしく、労働条件を変更する手段としてなされる解雇として変更解約告知に当たるのではないでしょうか。

変更解約告知とは、「労働条件の変更を申し入れ、これに応じない場合には労働契約を解約する旨の意思表示」を意味します(水町勇一郎「詳解  労働法」初版950頁)。このように、労使間の合意による労働条件の変更(労働契約法3条1項)を目指し、変更について承諾しないのであれば解雇をする、というものです。

配転命令による労働条件の変更は、労働者の同意を要することなく、使用者の一方的な意思表示によりなし得るものです。そのため、配転命令に従わなかったことを理由とする解雇は、労働条件の変更について労働者の承諾を求める過程で行われる変更解約告知とは異なります。したがって、配転命令に従わなかったことを理由とする解雇については、変更解約告知ではなく、普通解雇又は懲戒解雇として、その適法性・有効性を検討することになります。普通解雇と懲戒解雇のいずれに該当するかは、使用者がどちらを選択したのかによりますので、問題文の記述に依拠して判断することになります。

例えば、普通解雇であれば、就業規則上の解雇事由該当性・客観的合理的理由・社会通念上の相当性という3要件による整理を前提として(平成23年司法試験第1問・令和1年司法試験第1問の採点実感参照)、就業規則上の解雇事由該当性のところで配転命令の有効性について配転命令権の根拠・黙示の職種勤務地限定合意の成否・配転命令権の濫用という3つの観点から判断し、配転命令が有効であるとして就業規則上の解雇事由該当性が認められた場合にはさらに客観的合理的理由と社会通念上の相当性も検討することになります。変更解約告知の当てはめで問題になる労働条件についての使用者側の必要性と労働者側の不利益については、主として、社会通念上の相当性の当てはめで問題にすることになると思います。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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