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逮捕に伴う捜索・差押えの根拠について緊急処分説を採った場合、第三者の身体・所持品に対する無令状捜索を肯定することができるか

逮捕に伴う捜索・差押えの根拠について緊急処分説を採った場合、第三者の身体・所持品に「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」(222条1項・102条2項)があることを条件として、第三者の身体・所持品に対する無令状捜索を肯定することはできますでしょうか。

222条1項・102条2項は、捜索の実体的要件に属するものであり、実体的要件のうち基本要件を充足する場合に顕在化する加重要件です。つまり、捜索対象とされている場所・物・身体が捜索可能なものであることを前提として、これらが第三者の場所・物・身体である場合には「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が積極的に認められるという要件を加重するものです。

緊急処分説は、相当説が述べる根拠(証拠存在の蓋然性の一般的・類型的な高さ)が妥当することを前提として、証拠保全の緊急の必要性の存在も加味して、無令状捜索・差押えの許容範囲を相当説よりも限定する見解です(川出敏裕「判例講座  刑事訴訟法  捜査・証拠篇」初版151頁・160頁等、宇藤崇ほか「リーガルクエスト刑事訴訟法」第2版140~141頁)。そのため、相当説から許容されない無令状捜索・差押えは、緊急処分説からも許容されません。

第三者の身体・所持品については、相当説からは、証拠物存在の蓋然性が一般的・類型的に高いとはいえないとの理由から、無令状捜索の対象に含まれないと解されています。そのため、緊急処分説からも、2つの根拠のうち、証拠物存在の蓋然性の一般的・類型的な高さが妥当しないとの理由から、無令状捜索の範囲に含まれないと解されることになります。

このように、第三者の身体・所持品については、無令状捜索の基本要件を欠く以上、相当説・緊急処分説のいずれからも、第三者の場所・物・身体である場合には「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が積極的に認められるという加重要件(222条1項・102条2項)の充足性にかかわらず、無令状捜索は許されないと解することになります。

あとは、第三者が「逮捕の現場」にあった証拠物を身体・所持品中に隠匿したと疑われる場合には、「必要な処分」(222条1項・111条1項)を法的根拠として、必要かつ合理的な範囲で捜索することができるにとどまります。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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