加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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被告人の自白を内容とする公判廷外供述の証拠能力を検討する場合における、322条1項但書と自白法則(憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項)の関係

被告人の自白調書における憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項と刑事訴訟法322条1項但書の関係について、質問がございます。加藤先生がお薦めなさっている古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版287頁では、「自白の場合、それが口頭によるものであれ、書面によるものであれ、322条1項ただし書を経て319条1項を準用するのではなく、319条1項をストレートに適用し、その法解釈をすべきなのです」(自白法則により証拠能力が否定されない場合に初めて、伝聞法則を検討すれば足りる)。」とされています。この理解を前提する場合、322条1項の伝聞例外についてどのように書けばいいでしょうか。①自白法則(憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項)との関係で任意性を検討してから、②伝聞法則の検討に入り、伝聞証拠該当性を認定した上で、自白も322条1項本文の「不利益な事実の承認」にあたる⇒前述のとおり任意性もあるから322条1項の伝聞例外も満たす、という流れで検討するべきでしょうか。

古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版287頁の立場は、被告人の自白を内容とする伝聞証言・被告人の自白を内容とする供述代用調書(被告人の自白調書を含む)については、①自白法則(憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項)との関係で任意性を検討し、②任意性が認められた場合には、次に、伝聞法則の検討に入り、伝聞証拠該当性を認定した上で、322条1項本文の要件充足性を検討する(自白には322条1項但書が適用されないため、ここで改めて任意性に言及する必要はない)、というものです。被告人の自白調書の証拠能力が問題となっている場合であれば、上記の流れで書くべきです。

もっとも、それ以外の場合(被告人の自白を内容とする伝聞証言、又は被告人の自白を内容とする被告人以外の供述代用調書の証拠能力が問題となっている場合)には、伝聞法則から先に書くべきです。この場合には、自白法則と伝聞法則のうち、伝聞法則だけが正面から問われているはずであり、それにもかかわらずいきなり自白法則から書くというのは、不自然だからです。例えば、「被告人甲がVを殺害したと言っていた」旨の記載のあるW作成の日記帳の証拠能力が問題となってる場面であれば、伝聞法則から先に検討し、㋐Wの供述内容の真実性のみならず甲の供述内容の真実性も問題となるから再伝聞証拠に当たると認定した上で、㋑Wの伝聞過程について321条1項3号の要件充足性を検討し、㋒㋑が認められたら甲の伝聞過程について322条1項本文の要件充足性(「被告人が作成した供述書」のうち「自己に不利益な事実の承認を内容とするもの」に当たること)を検討します。これらの検討過程を経て伝聞例外の要件を満たすという結論になった場合には、最後に、自白法則(憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項)との関係で任意性について軽く言及し、任意性も認められるのであれば証拠能力あり、という結論を書きます。

さらに言うと、被告人の自白調書の証拠能力が問題となる場合以外については、被告人の自白にも322条1項但書の適用により319条2項が適用され、任意性についても322条1項の伝聞例外の要件の一環として要求される、という理解のほうが良いと思います。平成23年司法試験設問2の出題趣旨では、「甲が乙を一緒にVを殺害したと言っていた」旨の記載のあるB作成のメールを印刷してこれを添付した捜査報告書について、甲の被告事件との関係では再伝聞証拠に当たる上、甲の再伝聞過程には324条1項の準用により322条1項が準用されることを前提として、「自己を被告人とする関係では刑事訴訟法第322条第1項・・の適用が問題となる。・・甲・・の各発言が、・・V女の殺害を認めるもので、不利益な事実の承認に当たることや、死体遺棄を手伝うように依頼する際、友人のBに対して発言したものであるという具体的事実を的確に当てはめることが求められ・・る・・。」とされています。ここでいう「死体遺棄を手伝うように依頼する際、友人のBに対して発言したものであるという具体的事実を的確に当てはめることが求められ・・る・・。」とは、発言の状況からして任意性を否定する事情はないということを意味していると思われますし、出題趣旨・採点実感では自白法則(憲法38条2項・刑事訴訟法319条1項)についての言及がないことからしても、司法試験委員会としては、少なくとも被告人の自白調書の証拠能力が問題となる場合以外については被告人の自白にも322条1項但書の適用により319条2項が適用されるという立場に立っていると思われます。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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