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他人名義のクレジットカード使用についてカード名義人の承諾がある場合、詐欺罪の成立が否定されるか

他人名義のクレジットカード使用についてカード名義人の承諾がある場合、詐欺罪の成立は否定されるのでしょうか。判例の立場からすると、被害者は加盟店であるため、カード名義人による承諾をもって被害者の承諾ありとして違法性阻却を認めることは出来ないと思いました。

他人名義のクレジットカードを使用して財物を購入することについて、最二小決平成16・2・9・百Ⅱ54は、加盟店を被害者と捉え、クレジットカードの名義人と利用者の同一性が詐欺罪における法益関係的錯誤の対象である重要事項に当たるとして、名義人と利用者の同一性を偽ること自体が加盟店に対する「欺」罔行為に当たり、加盟店に対する1項詐欺罪が成立するとしています。このように、名義人と利用者の同一性を偽ること自体が「欺」罔行為を構成するため、名義人がカード使用について承諾しているかどうか、さらには利用代金が名義人において決済されるかどうかは、「欺」罔行為の成否に影響しません。したがって名義人と利用者の同一性の偽りがあれば、名義人によるカード使用についての承諾や利用代金について名義人により決済される可能性があっても、詐欺罪の客観的構成要件該当性が認めらます。また、構成要件的故意の認識対象が客観的構成要件該当事実と一致することから、詐欺罪の客観的構成要件該当事実について上記のように理解する以上、利用者が名義人と利用者の同一性を偽っていることを認識していれば、利用者が名義人によるカード使用についての承諾や利用代金について名義人により決済される可能性を認識していたとしても、構成要件的故意も認められることになります。

それから、被害者を加盟店と捉える上、被害者は加盟店であるため、カード名義人による承諾をもって被害者の承諾ありとして違法性阻却を認めることはできません。もっとも、利用者が名義人の近親者である等、利用者を名義人本人と同視しうる場合には、可罰的違法性を欠くとして詐欺罪の成立が否定される余地がある(大塚裕史「基本刑法Ⅱ」259頁)ため、名義人による使用承諾は、その限りにおいて、意味を持ちます。

2020年09月12日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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