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氏名冒用訴訟における被冒用者たる被告の救済手段

秒速・総まくり2020・11頁[論点2]では、氏名冒用訴訟で被冒用者たる被告の敗訴判決が確定した場合における救済手段として、①再審の訴えの提起と、②再審の訴えを経ることなく後訴を提起して判決の無効(ゆえに既判力が生じていないこと)を主張すること、及び③再審の訴えを経ることなく確定判決の不当騙取を理由とする不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起することの3つを挙げています。これらのうち、①と②とでは、被冒用者たる被告における手続上の負担等について、どういった違いがあるのでしょうか。

被冒用者の救済手段として再審の訴えを用いる場合、㋐再審事由の存否審理(346条1項、345条2項)⇒㋑存在すれば本案の再審理・裁判という流れを辿り(348条1項)、㋑の段階で原確定判決を不当とすれば、不服の主張の限度で原確定判決を取り消し原確定判決に代わる裁判をすることになります(348条3項)。再審請求に対する終局判決が確定すれば(なお、審級に応じた上訴可能。伊藤眞「民事訴訟法」第6版774頁)、終局判決通りの既判力が生じます。なお、原確定判決の既判力の消滅の効果が確定するのは、再審開始決定が確定した段階です(新堂幸司「新民事訴訟法」第5版948頁)。

これに対し、後訴で判決無効を主張する場合、その主張が認められるのであれば、再審の訴えを経由することなく、後訴において、原確定判決が無効でなければ既判力が生じていたであろう判断内容に抵触する主張をすることができます。

2020年09月09日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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