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債権者代位訴訟において詐害行為取消権を再抗弁として主張することの可否

平成23年司法試験設問1(2)のように、債務者Aが第三債務者Bに対する金銭債権を消滅させる行為(債務免除等)をした場合において、債権者Cが当該金銭債権を被代位権利とする債権者代位訴訟を提起したときに、第三者債務者から被代位権利の消滅原因として債務者による債務免除等が主張されることになると思います。これに対して、債権者は、債務免除等を詐害行為として取り消す旨の再抗弁を主張することはできるのでしょうか。

改正民法下では、詐害行為取消訴訟の認容判決の効力が「債務者」にも及ぶため(新425条)、債務者Aによる債務免除等を取り消す旨の判決が確定した場合には、債務者Aと債権者Cとの間においても、債務免除等の取り消しにより債務者Aの第三債務者Bに対する金銭債権が復活したことになります。したがって、既に詐害行為取消訴訟で認容判決が確定しているのであれば、債権者Cは、債権者代位訴訟において、債務者Aによる債務免除等を原因とする被代位権利の消滅の抗弁に対する再抗弁として、債務者Aによる債務免除等が詐害行為として取り消されたことを主張することができます。

もっとも、詐害行為取消権は、必ず裁判上の行使によらなければならず、抗弁や再抗弁として行使することはできません(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」250頁)から、詐害行為取消訴訟で認容判決が確定していない状態で、債権者Cが債務免除等を詐害行為として取り消す旨の再抗弁を主張することは許されません。

したがって、「詐害行為取消訴訟⇒認容判決確定⇒債権者代位訴訟」という流れであれば債務免除等の抗弁に対して詐害行為として取り消した旨を再抗弁として主張することができるが、「いきなり債権者代位訴訟を提起した」という場合において債務免除等の抗弁に対して詐害行為として取り消す旨を再抗弁として主張することは許されない、ということになります。

2020年09月08日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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