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相殺における受働債権の弁済期の現実の到来の要否

秒速・総まくり民法2020では、231頁・ウ(イ)において「自働債権の債権者は、自働債権の弁済期が到来したならば、受働債権の期限の利益を放棄して弁済期を到来させることで、相殺適状を作り出すことができる」ある一方で、231頁・[論点1]受働債権の弁済期の現実の到来の要否においては「弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、期限の利益の放棄又は喪失等により受働債権の弁済期が現実に到来していることを要すると解する。」とあります。前者では受働債権の弁済期の繰り上げ相殺が可能なように読めますが、後者では繰り上げ相殺が不可能なように読めます。これは矛盾していないのでしょうか。

矛盾しません。「弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、期限の利益の放棄又は喪失等により受働債権の弁済期が現実に到来していることを要すると解する。」という判例の立場(後者)は、「自働債権の債権者は、自働債権の弁済期が到来したならば、受働債権の期限の利益を放棄して弁済期を到来させることで、相殺適状を作り出すことができる」という記述(前者)を前提とした、「相殺の効力が遡及する相殺適状時はどの時点か」という議論に関するものです。

例えば、「AのBに対する甲債権の弁済期は2020年10月1日、BのAに対する乙債権の弁済期は2020年12月1日、Aが2020年11月1日に乙債権の期限の利益を放棄して乙債権の弁済期を到来させることで相殺適状を作り出した上で甲債権を自働債権・乙債権を受働債権とする相殺をした」という場合に、11月1日における相殺が認められることについては、争いはありません(前者のルール)。問題は、この相殺の効力が遡及する相殺適状時は、㋐Aが期限の利益を放棄したことにより乙債権の弁済期が現実に到来した2020年11月1日なのか、㋑それともAが期限の利益を放棄することで乙債権の弁済期を到来させることが可能になった2020年10月1日なのかということであり、これが[論点1]受働債権の弁済期の現実の到来の要否(後者)という論点です。乙債権に利息が付いている場合などに、実益があります(㋑なら、10月1日以降の利息が消滅するため、Aにとって有利)。判例は、「弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、期限の利益の放棄又は喪失等により受働債権の弁済期が現実に到来していることを要する」という立場ですから、この相殺の効力が遡及する相殺適状時は、㋐Aが期限の利益を放棄したことにより乙債権の弁済期が現実に到来した2020年11月1日となります。

2020年09月08日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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