加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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債権喪失の抗弁と第三者対抗要件の抗弁の違い

債権喪失の抗弁と、第三者対抗要件の抗弁の違いがわかりません。債権が二重譲渡された場合において、第一譲受人からの請求に対して債務者が第二譲渡の事実を主張しても、第一譲受人の債権喪失を基礎づけることにはならないのではないでしょうか。また、「第三者」ではない債務者が第三者対抗要件の抗弁を主張するのもおかしいと思いました。第三者対抗要件の抗弁は、どういった場面で登場するのでしょうか。

AがBに対する債権をCとDに二重譲渡したという事案における第一譲受人CのBに対する譲受債権履行請求では、被告Bは、AD間における第二譲渡の事実だけを抗弁事実とする「単なる債権喪失の抗弁」を主張することはできません。

単なる債権喪失の抗弁を主張することができるのは、例えば、売主Xの買主Yに対する代金支払請求訴訟において、買主Yが、債権喪失原因として売主XによるZに対する債権譲渡の事実を主張する場合です。

上記の二重譲渡の事案では、被告Bとしては、①「債務者対抗要件の抗弁」と②「第三者対抗要件の抗弁」を主張することができ、Dが第二譲渡について第三者対抗要件を具備しているのであれば、③「Dの第三者対抗要件具備による債権喪失の抗弁」を主張することもできます。債務者が②第三者対抗要件の抗弁を主張することができるかについては、第一譲受人と第二譲受人とがいずれも債務者対抗要件を具備しているにすぎない場合には各譲受人は互いに優先することができ、その結果、債務者はいずれも譲受人に対しても弁済を拒絶することができるとして、肯定説が導かれます「紛争類型別の要件事実」132~133頁)。

①の抗弁事実は権利主張だけ、②の抗弁事実は㋐AD間債権譲渡・㋑債務者対抗要件具備・㋒権利主張、③の抗弁事実は㋐AD間債権譲渡・㋑第三者対抗要件具備です。なお、①と②は抗弁としての性格を異にし、権利主張の内容も異質であるから、包含関係にありません(「紛争類型別の要件事実」133頁)。

2020年09月08日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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