加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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「表現の自由」について、「情報流通権」として構成することの適否

平成30年司法試験のように、各所で判例の参照が要求される問題の場合、「表現の自由」について「情報流通権」として構成するのは避けたほうが良いでしょうか。本事例から最も近い判例がある場合に、基本書等で紹介されている広い概念の保護領域を設定することは危険だと思われますか。

「表現の自由」の保護領域について、「情報をコミュニケイトする自由」(渋谷「憲法」初版350頁)だとか「情報交換行為」(赤坂「憲法講義(人権)」初版19頁)といった説明がされるのは、結局のところ、閲読の自由の憲法21条1項による保障を肯定したよど号ハイジャック記事抹消事件判決(最大判昭和58・6・22・百Ⅰ14)や、知る権利の存在を承認した上でそれに奉仕することを根拠として報道機関の事実報道の自由について憲法21条1項による保障を肯定した博多駅事件決定(最大決昭和44・11・26・百Ⅰ73)といった判例(あるいは、その背後にある考え)があってこそのことだと思います。そうすると、やはり、判例に引き付けて論じるのが望ましいと思います。そのため、「表現の自由」の保護領域について「情報をコミュニケイトする自由」や「情報交換行為」の自由と捉えること自体には問題はありませんが、そのように捉えることができる理論的根拠として、判例(あるいは、その背後にある考え方)に言及する必要があると思います。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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