加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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A評価を取る上で、判例を踏まえた論述をすることは必要か

令和1年度司法試験の憲法についての質問です。今回の試験では、北方ジャーナル事件等の判例に全く言及することができなかったので、せいぜいC程度だと思っていたのですが、Aが付いていました。 そこで質問なのですが、成績が返ってくるまでは良くないと思っていたので、『次回の受験では判例に触れられるように対策しよう』と思っていたのですが、今回の結果を見て、『判例に触れる論じ方はほとんどの受験生にはオーバースペックで、今でも権利の論証から違憲審査基準を定立するという方法が通用するのではないか』と考えたのですが、いかがでしょうか。

憲法論文の対策としては、判例学説に関する知識を身につけることよりも、①人権の保障の内容・趣旨等の教科書知識、②違憲審査の基本的な枠組みの正しい使い方、③個別法の仕組みを正確に把握する力、④問題文のヒントを違憲審査の枠組みに落とし込む形で法的に構成し、文章化して答案に反映する力という4つを身につけることのほうが遥かに大事です。今回、判例に言及していないのにA評価が付いた理由は、採点上において判例に言及することよりも上記①~④という基礎的なことが重視されていることと、判例を踏まえた論述が明示的に要求されてから1年しか経過していないため判例を踏まえた論述をすることができている答案が少ないということにあると考えられます。

ご質問のうち、「判例に触れる論じ方はほとんどの受験生にはオーバースペックで、今でも権利の論証から違憲審査基準を定立するという方法が通用するのではないか」という疑問点に関係することとして、補足させて頂きます。確かに、最高裁は、多くの場合、違憲審査の手法として、「一定の利益を確保しようとする目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を具体的に比較衡量する」という「利益較量」論を採用しており、「違憲審査基準」そのものは採用していないと理解されています。最高裁は、違憲審査基準っぽい基準を定立することもありますが、それは大きな判断枠組みである「利益較量」論による判断の指標として言及されているものにすぎないと理解されています(堀越事件・最二小判平成24・12・7・百Ⅰ14 千葉勝見裁判官の補足意見参照)。しかし、司法試験委員会は、「保障⇒制約⇒違憲審査基準の設定⇒当てはめ」を違憲審査の基本的な枠組みであると理解しています(平成28年~令和1年司法試験の出題趣旨・採点実感参照)。なので、学説が違憲審査基準を採用している領域では、利益較量論に立っている判例を「違憲審査基準の定立・適用」という枠組みに引き直して理解・使用することになります。

2020年09月06日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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