刑法の三者間形式の問題における答案構成としては、小問及び自説で項目分けをする構成(以下「構成A」とします)と、自説を展開する途中で小問にも言及する構成(以下「構成B」とします)とがあります。
[構成A]
1.小問①
2.小問②
3.自説
[構成B]
1.要件a
2.要件b
3.要件c
(1)小問①
(2)小問②
(3)自説
4.要件d
5.結論
いずれの構成によるべきかは、小問における対立が罪名の違いをもたらすものなのか、それとも同一罪名内におけるものにとどまるものなのかによって判断します。
令和1年司法試験設問2では、甲が窃盗未遂を犯した後に乙が甲との現場共謀に基づき事後強盗目的に基づく脅迫行為を行った事案において、乙に事後強盗罪の共同正犯が成立するとの立場(小問①)及び乙に脅迫罪の共同正犯が成立するにとどまるとの立場(小問②)について説明した上で乙の罪責について自説を論じることが求められています。
この場合、小問①②における見解対立が罪名の違いをもたらすため、自説を展開する途中で小問①及び②に言及するという構成をとることは困難です。
したがって、小問及び自説で項目分けをする構成Aを選択することになります。
これに対し、令和2年司法試験設問1では、Aから500万円の債権回収の依頼を受けた甲が債務者Bに対して、債権額について600万円であると嘘をつくとともに、害悪を告知することにより600万の支払を求め、これにより畏怖したBが甲に対して600万円を支払ったという事案において、甲に成立する財産犯の被害額が600万円であるとの立場(小問①)及び甲に成立する財産犯の被害額が100万円にとどまるとの立場(小問②)について説明した上で甲の罪責について自説を論じることが求められています。
この場合、小問①②における対立は、甲に成立する同一の財産犯の内部における対立にとどまるため、途中までは自説を論じ、小問における対立が顕在化する構成要件要素(財産的損害)の段階で初めて小問に言及すれば足ります。
具体的には、詐欺既遂と恐喝既遂の区別→「恐喝」の手段たる脅迫→「恐喝して財物を交付させた」→1項恐喝と2項恐喝の区別について自説を論じた上で、財産的損害の内容ところで小問①及び②とそれを踏まえた自説を論じます。その後、故意→不法領得の意思→違法性阻却(35条)について自説を論じます。
問いに適合した構成を選択できるかは、答案の書き易さと説得力に大きく影響しますので、本記事を参考にして、適切な構成を選択するための視点を身につけて頂きたいと思います。
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