加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

強制処分該当性における「意思に反する」と「重要な権利・利益の制約」の関係

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刑事訴訟法における「強制の処分」の判断基準は、3つあります。

①「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加え」るかどうかという昭和51年決定が示した基準

②「相手方の意思に反して、重要な権利・利益を実質的に制約する処分」かどうかという現在の有力な学説の示す基準

③「個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害する」か否かという平成29年大法廷判決が示した基準

②は、重要権利利益実質的侵害説とも呼ばれる学説です。

②では、「強制の処分」の要件は、㋐相手方の意思に反して、㋑重要な権利利益を実質的に制約するという2つに整理されます。

平成27年・平成30年司法試験の出題趣旨・採点実感を読む限り、㋐ ⇒ ㋑ という流れで検討することが求められています。

㋐と㋑の関係については、重要権利利益実質的侵害説においては、「強制の処分」の判断基準の中核にあるのは㋑であり、㋐は「制約」の前提という意味で㋑の必要条件にすぎず㋑と異なる独自の意義を有するわけではない、と理解することになります(「刑事訴訟法判例百選」第10版・事件1解説[大澤裕]参照)。

「強制の処分」の判断基準の中核にある「重要な権利・利益を実質的に制約する」という要件は、(ⅰ)権利・利益を制約すること、(ⅱ)制約されている権利・利益が重要であること、及び(ⅲ)重要な権利・利益に対する制約が実質的な制約といえるほどのものであることの3つに分類され、(ⅰ)の前提として「相手方の意思に反する」ことが必要とされるため、㋐・㋑という2要件に整理されているに過ぎない、ということです。

このように、㋐は㋑のうち「…権利・利益を…制約する」という部分の前提に位置づけられる要件であるため、制約が問題となっている「権利・利益」も想定しながら㋐を判断することになります。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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