今回は、答案で読みやすい文章を書くコツについてお話しします。
司法試験・予備試験論文では、そこそこの内容的正確性をもって配点項目を出来るだけ網羅することが最も重要です。
ここでいう配点項目は、基本的には大・中・小の分類され、刑法であれば、大:罪名、中:体系・要件・論点、小:事実の摘示・評価という分類になります。
時間と紙面が限られている中で出来るだけ多くに配点項目に(正確に)言及するという意味で、点取りゲームのような側面が強いです。
現行の論文試験の特徴であると思われます。
もっとも、私がゼミ生等の再現答案と成績表を比較してきた経験からすると、読みやすい文章を書くということも、何らかの形で採点に影響を及ぼしていると考えられます。
文章の読みやすさについて、「印象点」等の形で独立の配点項目として設けられているかどうかは定かでありませんが、仮にそうでなかったとしても、配点項目ごとに配点の範囲内でどれくらい点を与えるのかという判断の過程に人間の主観が介在する以上、答案の読みやすさを始めとする答案に対する採点者の印象が採点に影響を及ぼすことになると思われます。
以下では、読みやすい文章を書くコツの一例を紹介いたします。
完璧を目指す必要まではありませんが、接続詞・接続助詞の使い方をはじめとする文章作成のルールを事前に決めておくと、読みやすい答案になる上、悩みが減ることで答案が書き易くなります(さらには書くスピードが上がる)。
可能な範囲で参考にして頂ければと思います。
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- 理由どうしを結ぶ順接は「それゆえ」「そのため」「そうすると」等
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- 論証中の理由と解釈を結ぶ順接は論理必然でない限り原則「そこで」
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- 事実評価(当てはめ)と規範該当性の結論を結ぶ順接は「したがって」、小項目(ごと)の結論と大項目の結論を結ぶ順接は「よって」
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- 一文で接続助詞の順接を2回使う場合は「ため」⇒「から」とし、同じ接続助詞を連続させない
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- 「確かに」以降の逆接は「しかし」
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- 「もっとも」「ただし」は補足の接続詞だから「確かに」以降の逆説として使わない
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- 仮定・前提条件は左から大きい順に「場合」「とき」 「時」は時点、「とき」は仮定等
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- 一文で接続助詞の順接を2回使う場合は「ため」⇒「から」とし、同じ接続助詞を連続させない
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- 「確かに」以降の逆接は「しかし」
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- 「もっとも」「ただし」は補足の接続詞だから、「確かに」以降の逆説として使わない
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- 仮定・前提条件は左から大きい順に「場合」「とき」
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- 「時」は時点、「とき」は仮定・前提条件
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- 主語と述語の対応関係を明確にする
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- 現場思考問題等で法解釈について私見を述べる際は「解すべきである」が望ましい
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- 文章力が高くないのであれば、一文を短くしたり、見出し付ける等の工夫をする
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- なるべく口語文法(「ので」等)ではなく文語文法に従って書く
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それから、文頭で「この点」「思うに」「これを本件についてみるに」等を答案で使っていいのかについて、私の考えを述べさせていただきます。
確かに、「この点」「思うに」等は、書かなくても答案の流れが読み手に伝わるので、答案の加点密度を高めるためにも書かない方がいいです。
このような実益の乏しい(さらには、修飾・被修飾の関係を不明瞭にしかねない)前置きを書かなくても読み手に伝わる文章を書けるだけの文章力を身につけるという意味でも、普段の答案練習では書かないようにしたほうがいいです。
しかし、これらを書くことが癖になっている人は、無理をしてまで改善する必要はないとも思っています。本試験まで数カ月しかないのであれば、尚更です。
基礎知識のインプット、科目分野ごとの答案の書き方・考え方を常識化するなど、もっと優先順位の高いことが他にあるからです。
文頭で「この点」「思うに」等を書いたところで、積極的に減点されるわけではないし、 加点密度や読み手の印象にもさほど影響しません。
良くも悪くも、人それぞれ、答案を書く際のリズムというものがあります。
文頭に「この点」「思うに」等を書いて一呼吸おいてからのほうが論証をスムーズに答案に反映することができるのであれば、「この点」「思うに」等を文頭に書いても構わないと思います。
科目分野ごとの答案の書き方のように、採点に直結することであれば、癖として染みついているものであっても修正する必要がありますが、採点上の不利益が非常に小さい「この点」「思うに」等については、無理をしてまで修正をする必要はないということです。
慣れない書き方を選択した結果、文頭表現に気を取られすぎてしまい、採点に直結することに頭を十分使うことができなくなる可能性もあります。
文頭表現に限ったことではありませんが、完璧を目指すのではなく、採点上の重要度も踏まえながら、「自分にとってベストな現実的な合格答案像」を設定することが重要であると考えます。
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