加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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試験本番で判例・通説以外の見解を採用することの適否

試験本番で少数説で書くことについて
例えば、令和3年予備試験論文刑法において、甲が乙のXに対する殺人を止めなかった行為につき、原則正犯説に立って(不作為の幇助ではなく)不作為の単独正犯と認定しました。このような認定は点数を落としますでしょうか。
また、このように、試験本番で少数説に立って論じることは、悪影響になりますでしょうか。

試験本番で判例・通説以外の見解を採用することの適否は、科目、問題文及び論点によって異なります。

まず、憲法・行政法・商法・刑事訴訟法・労働法では、判例の立場が明らかである論点については、判例の立場で論じることが想定されているため、基本的に、判例以外の学説を選択するべきではありません。高確率で失点することになります。それ以外の科目については、ある程度、学説選択についての自由が認められているので、判例・通説以外の見解を選択すること自体が失点に直結するという事態は、上記5科目に比べると少ないです。もっとも、判例・通説以外の見解を採用するのは、答案戦略上合理的な理由がある場合に限るべきです。

次に、問題文によっては、判例・通説で書かないと次の検討事項に進むことができず、失点することもあります。こうした場合は、判例・通説以外の見解を選択するべきではありません。例えば、ある問題点Aにおいて、論点aについて判例・通説に立った場合には、論点b→論点cまで進むが、論点aについて判例・通説以外の見解に立つと論点b以降に進まないという場合です。もっとも、問題点Aについて論点b・cまで書いていたのでは他の問題点Bについて言及する時間的余裕がないという場合には、答案戦略上、問題点Aにおいて論点aについて判例・通説以外の見解を採用して論点b以降に進まないようにするという選択をすることはありです。

それから、論点によっては、判例・通説が学者から圧倒的な支持を受けているものもあります。こうした論点については、判例・通説以外の見解で論じることは予定されていないでしょうし、学者から圧倒的な支持を受けている判例・通説を排斥してそれ以外の見解をを採用するべき理由を説得力をもって論じることは非常に難しいですから、判例・通説によるべきです。

2021年08月28日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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