加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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令和3年予備試験憲法の事案でパブリックフォーラム理論を適用することの可否

令和3年予備試験の憲法について、C地区の道路を古くからの環境保全地区としてその道路をパブリックフォーラムではないと認定することは可能でしょうか。吉祥寺構内ビラ配布事件で駅前広場がパブリックフォーラムたる性質を有するかは具体的状況によると読めることから、一般的にパブリックフォーラムに当たる道路でも、その住民が看板などの規制が不十分であると考えている事情に鑑み、環境保全地域であるが故にパブリックフォーラムではないとの立論で書いてみたのですが、いかがでしょうか。

吉祥寺駅構内ビラ配布事件(最判S59.12.18)における伊藤正己裁判官の補足意見は、「一般公衆が自由に出入りできる場所は、…表現のための場として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。これを「パブリック・フォーラム」と呼ぶことができよう。」と述べています。

その後、大分県屋外広告物条例事件(最判S62.3.3)における伊藤正己裁判官の補足意見は、「ビラやポスターを張付けするに適した適当な場所や物件は、道路、公園等とは性格を異にするものではあるが、私のいうパブリック・フォーラム…たる性質を帯びるものということができる。」と述べました。

C地区内の特別規制区域は、その相当部分が道路であると思われるため、印刷物配布との関係では「一般公衆が自由に出入りできる場所」であり「表現のための場として役立つ」ものとして、パブリック・フォーラムに当たると思われます。広告物掲示については、大分県屋外広告物条例事件における伊藤正己裁判官の補足意見を使い、パブリック・フォーラムたる性質を帯びると認定することになると思われます。

もっとも、C地区やその一部である特別規制区域がどういった場所なのかがはっきりとしないため、自分なりに説明した上で、パブリック・フォーラムに当たらないとする説明も、あり得ると思います。大事なことは、パブリック・フォーラムの理論を適用したかどうかという結論ではなく、パブリック・フォーラムの理論を適用できるかどうかを問題にした上で、自分なりの説明を示すことです。

ご質問にあるように、ちゃんと説明することができているのであれば、採点上積極的に評価されると思います。

2021年07月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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