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北方ジャーナル事件が示した事前差止めに関する判断枠組みの射程

北方ジャーナル事件について
公共的事項に関しない表現行為に対する事前差止めについては、同事件が示した例外的に事前差止めを許容するための規範を用いることができるのでしょうか。
同事件は、「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員または公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合」、当該表現行為が私人の名誉権に優先する公共の利害に関する事項であるといえ、要保護性が高いことから、当該表現行為に対する事前差止めを原則として許さないとしています。そして、「右のような場合においても」と示したうえで、例外的に事前差止めを許容するための規範を示しています。
このような判例の立場によると、上記のような場合にあたらない表現行為に対する事前差止めが問題となるとき、上記規範を用いることはできるのでしょうか。仮に用いることができない場合、通常の検討方法に従って、目的手段審査を行えば足りるのでしょうか。
ご回答のほど、よろしくお願いいたします。

北方ジャーナル事件大法廷判決は、①表現行為全般を対象として、事前抑制は「厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる」と述べ、さらに、②公共的事項に関する表現行為を対象とする事前抑制については、「原則として許されない」と述べることで、さらに違憲審査の厳格度を上げています。

そうすると、公共的事項に関しない表現行為については、公共的事項に関する表現行為に比肩するだけの要保護性がある場合を除き、①までしか妥当しませんから、「表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき」という判断枠組みは妥当しません。

そうすると、人権の性質と規制態様を考慮する際に規制態様として①に言及した上で、講学上の違憲審査基準を定立し、目的手段審査をすることになります。

2021年06月01日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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