加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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令和3年司法試験行政法設問2で求められている行政手続条例の使い方

解答速報の掲載、どうもありがとうございます。毎日大変参考にさせて頂いております。
令和3年司法試験行政法設問2の違法事由につきまして、ご質問がございます。
会議録111行目から「また,新規に屋台営業を始めようとして公募に応募した者の利益を不当に侵害することにならないか検討してください。なお,A市は,平成7年からA市行政手続条例を施行しており,同条例は行政手続法第2章と同じ内容の規定を設けていますので,必要に応じて参照してください。」との記載がありますが、これは公聴会開催の必要性(行手法条例10条)を示唆しているのでしょうか。
実際の試験では、なぜ行手法条例の記載がこの場所に書かれているのかと思いつつも答案に反映できず、裁量論の中に組み込んで構成してしまったのですが、復習している過程で少し疑問に思ったのでお教え頂けましたら幸いです。お手数をお掛けいたしますが、どうぞよろしくお願い致します。
(お忙しいと思いますので、もし見当違いでしたら、スルーしていただいて結構でございます。)

市長による条例26条に基づく選定・不選定の決定については、「地方公共団体の機関がする処分」のうち「その根拠となる規定が条例…に置かれているもの」(行政手続法3条5項)として、行政手続法第2章ないし第6章の適用が除外される一方で、A市行政手続条例が適用されます。

A市行政手続条例では、行政手続法第2章と同じ内容の規定が設けられているため、行政手続法10条と同じ内容と定めているA市行政手続条例10条の適用により、選定・不選定に先立ち新規営業希望者も含む利害関係者の意見を聴くために公聴会を開催する努力義務が発生する余地があります。

条例により、選定・不選定の際に「申請者以外の者の利害を考慮するべきことが許認可等の要件とされている」のであれば、公聴会を開催する努力義務が発生します。

問題は、㋐A市行政手続条例では公聴会の開催が努力義務にすぎないことと、㋑公聴会の不開催は本来的には手続上の瑕疵に関するものだということです。

まず、㋐についてですが、下級審裁判例の中には、申請者以外の者に意見陳述の機会を与えることが憲法31条に違反する疑いがあるとして、執行停止の申立てを認めることにより、申請者以外の者の意見を聴取する機会を設けることが努力義務にとどまらず憲法上の要請となる場合があることを認めたものもあります(松山地判S43.7.23、宇賀克也「行政法概説Ⅰ」第6版435頁)。そのため、例えば、新規営業希望者の利益が憲法上の「職業の自由」(同法22条1項)に属することをなどに着目して、新規営業希望者の意見を聴取することが憲法上の要請として義務付けられると解する余地もあります。

次に、㋑公聴会開催義務への違反を実体上の違法事由として論じることの可否についてですが、裁量処分に関する判断過程審査は実体上の違法事由の審査手法であるところ、公聴会を開催することなく新規営業希望者の意見を聴取しなかったことは、考慮不尽による裁量権の逸脱濫用として実体上の違法事由を基礎づけると理解することも可能ですから、市長の選定に係る「判断の内容」の瑕疵という実体上の違法事由に属する第2の違法事由との関係で公聴会不開催を問題にすることも可能です。さらに言うと、本問では市長の他事考慮又は考慮不尽の有無との関係では諮問委員会の推薦の合理性が問題となっており、その推薦の合理性の検討過程で公聴会開催による意見聴取の要否を論じるだけですから、公聴会不開催を実体上の違法事由である第2の違法事由との関係で論じることについて特に問題はありません。

そして、仮にBを屋台営業候補者として推薦する過程で新規営業希望者の利益に配慮するため公聴会を開催して同人の意見を聴取することが要請されるのであれば、それを怠ったという点で諮問委員会の推薦の合理性を否定する余地があります。上記㋐では、利害関係者の意見聴取を憲法上の要請であるとした下級審裁判例について取り上げましたが、あくまでも市長の判断過程を審査する前提として諮問委員会の推薦の合理性を検討する際に、公聴会不開催についても言及しているのですから、仮に公聴会開催により新規営業希望者の意見を聴取することが憲法上要請されるとまではいえなくても、新規営業希望者の利益にも配慮することが要請されていたとして、その配慮を全くしなかったことから推薦の合理性を肯定するという論じ方もありだと思います。つまり、推薦の合理性の検討過程で公聴会不開催が問題になっているにすぎないのだから、公聴会不開催を理由として推薦の合理性が否定するためには、公聴会開催により新規営業希望者の意見を聴取することが法的義務として要請されることまでは必須でないということです。

参考にして頂けますと幸いでございます。

2021年05月23日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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