加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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不動産の第一譲受人が第二譲渡を詐害行為として取り消した後の処理について

お世話になっております。
総まくり2021民法の197~198頁[論点1]不動産の二重譲渡における第二譲渡の詐害行為取消しにおける(論証4)に関しての質問です。
論証4の通り、第二譲渡を詐害行為として取り消した第一譲受人は、自己に所有権があることを前提として自らが当該不動産の所有者であると主張したり、自己への所有権移転登記を求めることはできないと解すると、第二譲渡を詐害行為として取消しても、登記は債務者名義になり、債権者には移転しないことなります。
これだと、第二譲渡を詐害行為として取消しても、第一譲受人には無意味になってしまうように思います。そうなると、答案で解答する際に、どう締め括ればいいのでしょうか?
答案では、「詐害行為取消し→論証4をを論じる→債務者名義の登記になる。以上」という流れになるのでしょうか?

まず、第一譲受人が第二譲渡を詐害行為として取り消そうとするのは、第二譲受人が所有権移転登記を具備している場合です。仮に登記名義が売主(債務者)のままであるのであれば、第一譲受人は対抗関係において負けていないわけですから、第二譲渡を詐害行為として取り消そうとはしません。登記名義が売主(債務者)のままである場合、第一譲受人としては、不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の申立てをした上で、売主を被告として所有権移転登記手続請求訴訟を提起することになります。

次に、論証4の通り、第一譲渡人は、自己に所有権があることを前提として、第二譲受人に対して、自己への所有権移転登記を求めることはできません。第一譲受人としては、詐害行為取消訴訟訴訟において、第二譲受人に対して、所有権移転登記の抹消登記手続を求めることになります。第一譲受人が勝訴すると、抹消登記手続により、不動産の所有名義が第二譲受人から売主(債務者)に戻ることになります。

そして、第一譲受人としては、売主(債務者)に対して売主の所有権供与義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟(415条1項本文)を提起して、同訴訟で勝訴することで債務名義を取得した後に、売主名義となった当該不動産に対して強制執行をかけることにより、自己の損害賠償請求権を回収することになります(潮見佳男「プラクティス民法債権総論」第5版補訂版228頁)。

これは、強制執行の準備をするために責任財産を保全するという詐害行為取消権の制度趣旨に適った帰結です。

2021年05月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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