加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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適用違憲の審査で目的手段審査をすることの適否

適用違憲の審査では、法令違憲審査のように、目的手段審査をすることができるのでしょうか。それとも、手段適合性、手段必要性、手段相当性といった手段審査だけをすることになるのでしょうか。

適用違憲審査でも、理論上は、法令違憲審査と同様、目的と手段の双方が問題になります。もっとも、通常は法令の適用行為の目的と法令自体の目的とは一致しますから、手段の問題だけが顕在化するのが通常です。仮に法令の適用行為の目的と法令自体の目的とが一致する場合において、法令の適用行為の目的が違憲であるならば、そもそも法令自体が目的審査で違憲になるわけですから、法令の適用行為の目的の違憲性は法令の適用行為に固有の問題ではないことになります。

これまでの司法試験では、法令の適用行為の目的と法令自体の目的とがずれている事案は一度も出題されていませんから、適用違憲審査が出題された場合は、法令の適用行為の目的と法令自体の目的とが一致しているはずです。そうすると、あとは、法令の適用行為が法令自体の目的を達成する手段として、適合性を有するか、必要性を有するか、相当性を有するかについて、司法事実を使って判断することになります。そして、適合性や相当性についてどこまで厳格に判断するのかと、必要性まで要求されるのかについては、適用違憲審査をどこまで厳格に行うのかによって異なります。適用行為審査の厳格度は、法令違憲審査の場合と同様、主として制約されている人権の性質と規制の強度を考慮して決することになります。

なお、集会のための市民会館の使用不許可の事案では、通常、明らか差し迫った危険の基準を使うことになりますが、明らかな差し迫った危険の基準も、やっていることは、目的・手段審査と同じです。目的・手段審査のやり方が定式化されているだけ、というイメージです。例えば、明らかな差し迫った危険の基準では、被害法益が生命・身体・財産に限定されていますが、それは、生命・身体・財産を保護するという目的でなければ集会の自由を制約するにふさわしい目的であるとはいえないからです。これらの被害法益に対する明らかに差し迫った危険まで要求されている点は、これを満たせば手段の適合性・必要性・相当性をすべて満たすという意味です。

2021年04月29日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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