加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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義務的団交事項について団体交渉を経ずに行われた争議行為の正当性

争議行為の目的の正当性の判断基準について
水町先生の「労働法」第8版375~376頁には、「争議行為とは、団体交渉において要求を貫徹するために圧力をかける行為として法的に保障されたものである。したがって、その正当性判断の重要なポイントは、「団交のための圧力行為」と言えるか否かにある。…争議行為の目的(争議行為における要求事項)は、団体交渉の対象となるべき事項(義務的団交事項)に限定される。」との記載があります。
争議行為が団交の要求事項の貫徹のために行われる行為だとすれば、争議行為の要求事項が「義務的団交事項であり、かつ、当該団体交渉で要求している事項」と言えなければ、争議行為の目的の正当性が認められないものと今まで考えていたのですが、争議行為の要求事項が義務的団交事項であれば、当該団体交渉で要求している事項でなくても目的の正当性は認められるのでしょうか。

争議行為は団体交渉の圧力手段として保障されるものですから、その正当性が認められるためには、少なくとも、①争議行為における要求事項が義務的団交事項にあたることと、②葬儀行為における要求事項について既に団体交渉を経ていることが必要です。

①は目的の正当性として、②は手続の正当性として要求されます。

したがって、例えば、労働組合が使用者に対して所属組合員に対する賞与支給を求めて団体交渉を経ることなく争議行為を行った場合には、目的の正当性を満たしますが、要求事項について団体交渉を経ていないため、手続の正当性を欠きます。また、労働組合が使用者に対して所属組合員に対する賞与支給を求める団体交渉を行った後で所属組合員に対する休暇付与を求めていきなり争議行為に及んだ場合にも、目的の正当性を満たす一方で、争議行為における要求事項について団体交渉を経ていないため手続の正当性を欠きます。

このように、争議行為における要求事項について団体交渉を経ているかどうかは、目的の正当性ではなく、手続の正当性で問題にすることになります。

2021年04月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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