加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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248条に基づく賞金請求に対する即時取得の抗弁における即時取得の客体について

いつもお世話になっております。
平成27年度新司法試験民法設問1小問(2)におけるDの反論のうち、即時取得の成否と「法律上の原因」の存否の関係について、質問がございます。
加藤先生の解説及び採点実感では、ここでの即時取得の対象について、「材木②の価値に相当するもの」とされています。
ここで、材木②はDが所有する乙建物のリフォームに用いられていることから、即時取得の対象を「材木②の価値に相当するもの」ではなく、単に「材木②」と書くのは誤りなのでしょうか。
加藤先生や採点実感が両者を明確に区別している理由について、ご見解をお伺いしたいです。
ご回答のほど、宜しくお願い致します。

平成27年司法試験民法設問1(2)では、以下の事案で、AがDに対して、Cが乙建物(D所有)のリフォーム工事に材木②を使用したことにより付合(242条本文)を原因として材木②の所有権を失ったとして、248条に基づく償金請求をしています。

  • AがBに対して丸太20本を売却(主有権留保特約付き)
  • Bが丸太20本を製材した上でCに売却
  • CがDとの請負契約に基づきBから買い受けた材木②(丸太を製材したもの)を用いて乙建物(D所有)の柱に変えるなどして乙建物のリフォーム工事を完成させた
  • BがAB売買における代金支払時を経過しているにもかかわらず売買代金を支払っていない

AのDに対する償金請求は、材木②が乙建物に付合した場合に、材木②の価値相当額の金銭の支払いを求めるものであり、これは、材木②が乙建物に付合していない場合におけるAのDに対する所有権に基づく物権的返還請求(材木②そのものの返還請求)に代わるものであるといえます。そのため、両者の平仄を保つために、所有権に基づく物権的返還請求を即時取得の抗弁により封じることができるのと同じように、償金請求についても即時取得の抗弁により封じることが認められることになります。

もっとも、あくまでも、償金請求では、請求の客体は材木②そのものではなく、材木②の価値相当額の金銭ですから、即時取得の抗弁を論じる場合における即時取得の客体も、材木②の価値に相当するものとなります。請求と即時取得の客体は一致しなければいけないからです。

2021年03月31日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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